ルーペを通して見抜かれる価値は。

2011年1月10日 § コメントする

「おっしー。がんばってアピールしたってな。渡辺さんにも話題を振ったりしていけばいいと思

 

「あのさあ、かっちゃんがいろいろとしゃべってもらえやん?」

 

「あ、うん、ええよ。それじゃあ、ものすごく涙腺を誘うエピソードで、中島さんの心をしっかりとつかむわ」

 

こんなやり取りがなされている間に、鑑定は山梨英和高校へと移っていった。

 

「山梨英和高校って、清里に行く途中に寮があるでしょ?」

 

「はい」

「どんな子達が通ってる学校かと思ってたけど、やっと会えましたねえ」

「お?これは先生、評価上がりますか?」

 

「甘いからねえ」

 

「さあ山梨英和、アピールのチャンスですよ」

清里か・・・清泉寮でソフトクリーム食ったぐらいの記憶しかないなあ。

古賀の清里に関する知識はこの程度である。山梨英和が私立の学校だということは知っていたが、どうやら清里にある全寮制か、少なくとも寮付きの学校らしい、と古賀は勝手に解釈した。

 

「ぜひ、『いい仕事』のお言葉を」

 

ワラで作られた[せなっこうじ]を持ってきた英和高校、中島氏に果敢にアタックをかける。

「山梨英和、攻めてきましたねえ。先生、どうですか?」

 

「ええ、そりゃもうこれはいい仕事してますよ」

 

会場は大喝采。

「生『いい仕事』聞いちゃった」

 

「本物だよ」

 

クイ中達も大喜びである。

 

「でも仕事と値段は別ですからねえ。はい、出ました」

 

「それでは山梨英和高校の評価額はおいくらでしょうか?」

 

TVでやってるような、ティロロロロロロといった感じの音が流れると思っていたクイ中達にとっては、音もなく数字を出す電光掲示板は少し拍子抜けするものだった。まあ、コレがTVというものなのだろう。現れた数字は5000。やはり、ワラ細工では難しかったのだろうか?

「ほら、このシャッターの音。もうあんまりないよ、こんなにいい音だすのものは」

 

「カシャッ!」

 

その音に、会場からは溜息が漏れる。

「あちらにいる方のカメラなんですけど」

と、年季の入った一眼レフカメラを持ってきた佐賀西高校チームは、会場にいるお世話になったご家族の方を手で示した。

「あ、アルバムに写っていたお父さんとお母さんですか。どうぞこちらに」

と、羽鳥アナは夫妻を佐賀西の横へと呼んだ。夫妻はアピールを必死で考える清水ら、川越高校チームの横を通り過ぎた。

「あれいいね。僕らも渡辺さん来てるし、そこんとこもアピールしとこうか」

古賀の言葉に

「そこらへんはすでに計画済みさ。涙の出てくるようなエピソードで攻めるよ」

と、すでにアピールタイムのときに話すことが、大体頭の中でまとまった清水が答えた。

「おう、んじゃ頼むで」

 

正面に目を戻すと、電光掲示板が回り始めた。

「佐賀西高校の鑑定額は2500円でした。あっと、お父さん、がっくしと片膝をついてズボンが汚れてしまいました」

そんな値段にも関わらず、中島さんは

「音がいい」

と言って最後にまたシャッターを鳴らした。カシャッ!

白ヘルメットの金沢大学附属高校が持ってきたのは、いかにもな感じの古文書と古地図であった。

「なるほど、この辺りの地図ですかねえ」

と、中島氏もかなりの注目をしている。

「それでは、金沢大学附属高校、先生の鑑定はおいくらでしょう?」

結構高そうだな、そんな3人の予想に、数字はたがわなかった。

「金沢大学附属高校、35000円です!どういったものなんでしょうか、先生?」

 

「これはねえ、地図が高かったんですよ」

 

「それでは、石橋高校の評価額はおいくらでしょう?」

 

石橋高校チームが持ってきていたのは、南総里見八犬伝数冊であった。先の古文書と地図には結構な額がついたので、クイ中達もそれなりの額を予想していた。今のところ、トップバッターの東大寺学園に及ぶチームは現れていない。

「2000円!がっくし石橋高校」

「これはねえ、八犬伝は数が出てるんですよ。ですから、初版本でもない限り難しいんですよ。それと、全巻そろってないのが残念ですねえ」

やはり、見るべきところはきちんと見ている。

「戦争に関するアンティークとして見ちゃうと、どうしてもこんな値段になっちゃうんだよねえ。でもねえ、お金には出来ない価値があるんだから、大事にして欲しいですね」

柏原高校が持ってきた戦時中の水筒も3500円という大分低い評価となった。『お金に出来ない価値』という言葉も、鑑定額が低かった人を慰めるために言っているんだろうが、時には結構残酷な言葉にもなるよな、と古賀は思った。

カンフー服のメンバーを始めとした大阪市立中央高校チームは、珍しい2レンズのカメラを持ってきた。あの2レンズは、写真を撮影する上で一体どんな役に立っているのだろうか?

カメラに詳しくないのでよくわからない古賀に、もう1つある疑問が浮かんだ。なんか順番が妙な感じがするんだけどなあ。中央高校は、鯨波ではもう少し早く抜けていたと思うのだが。

「さあ、中央高校、先生の鑑定はおいくらでしょう?・・・28000円です!」

同じカメラだったが、中央と佐賀西は明暗を分ける結果となってしまった。

「こういうコレクションはですね、たまにあっちゃいけないコインが入ってたりするんですよね」

「つまりそれは…」

「ニセモノって事です。うん、これは大丈夫だね」

加治木高校が持ってきたのは、かなりの数の古銭コレクションである。まだ、東大寺学園を超える額を叩き出したチームはいない。今のところ、鑑定待ちをしているのは神奈川工業チームと川越高校チーム。

ここまでの順番がおかしいような気もしていたが、やはり綱引きの順なのだろう。ずっと綱を引いていた自分達に、抜けた高校の順番がきちんと憶えろと言う方が難しい。きっと思い違いだったのだ。

 

「よっしゃ、次やね」

 

「いよいよやな。かっちゃん、アピールはよろしくね」

 

「おう、任しといて」

 

「それでは、加治木高校の評価額はおいくらでしょう?」

 

43000円、東大寺には及ばなかったが、数が効いたのだろうか、なかなかの高額鑑定となった。よし、いよいよだ。クイ中達が、羽鳥アナの呼び声を待ち受けていたそのとき

「それでは、次は神奈川工業です」

どういうことだ?3人の脳裏に、同じ疑問が浮かんだ。綱引き勝ち抜けの順番なら、8番目が川越、9番目が神奈川工業だったはずである。よく考えてみれば、敗者復活の金大附属はだいぶ前に鑑定を終えている。

鑑定の順番の根拠は一体何なのか?そんなことを考えていると、既に神奈川工業のアピールは始まっていた。

「斧がキチンと取り外し出来るんですよ」

 

「ほうほう。あ、この、手にある本はきちんと文字が読めるんですねえ」

「ページもきちんとあるんですよ」

「ああ、これはさすがにいい仕事してますねえ」

 

「おおっと、また出ました、『いい仕事』です!」

 

神奈川工業が持ってきたのは、二宮金次郎の像であった。あれのでっかいやつは夜に運動場を走り回るんだよな、などと古賀は再び埒もないことを考えていた。

「さあ、神奈川工業、先生の鑑定はおいくらでしょう?」

赤い光が示したのは、12000円。クイ中達の予想よりも低い額であった。こうしてみると、東大寺の65000円はかなり高い壁だと言える。彼らはあれだけの数の写真から、よくいい写真を選んだものである。さて、次は自分達だ。3人は、今度こそ必ずかかるはずの、羽鳥アナの呼び声を待った。

「これはですね、私達がお世話になった、渡辺公一さん、あちらにいらっしゃるんですが」

と清水はその方向を手で示し、渡辺さんへ話を振る、という当初の計画をまず果たす。

「そちらのお宅にあった人形で、約240年間代々続くって言われる歴史の中で、いつ頃からあったのかわからないくらい古いんです。江戸時代末期か?なんて話も聞いて、その歴史に惹かれて選びました」

中島氏の眼が、人形の折れてる方の角に向いた。

「角が折れちゃってるんですけど、それすらもいつ折れたかわからないくらい古いんですよ」

古賀も、話題が折れている角に向く前に先手を打った。少しでも好意的に見てもらわなければならない。

「ああ、中にクモの巣張ってるねえ」

・・・やはり、見るところは見てくる人である。

「クモも安心して巣を張れるような、そんな場所なんですよ」

清水がかなり苦しい言い訳をして、話を丸くおさめた。

「さあ、川越高校もどんどんアピールしていかないと」

羽鳥アナがクイ中達を促す。

「でもこんな風に力強く見つめられるとやりづらいねえ。この人形、彼に似ていない?」

と、中島氏は清水と人形を見比べて言う。

「きっと縁があるんですよ」

と、古賀がもう一押し。その言葉には中島氏も苦笑いをし、それを見た古賀も深追いしすぎたと少し後悔した。

「それでは評価の方に参りましょうか。どれくらいになると思う?」

「そうですねえ・・・」

安いかもしれない、という不安を打ち砕くように

「10万円ぐらい、いや100万ぐらいかな」

と清水は言った。

「そうですかあ。じゃあ鑑定結果を見てみましょうか。川越高校、先生の鑑定はおいくらになるでしょう?」

くどいようだが、赤い明滅には電子音もドラムロールもない。いくらになるのか?

いつも清水が言うように、1番でなくてもいい。ただ勝ち抜けることが出来ればいい。だが、出来るだけ高額であってくれ・・・。クイ中達が注視する中で、赤い光はやはり音もなく数字を形作った

。1と、後は0の羅列。一瞬は、10000円かと思われた。とりあえず、下の方の桁から数えてみる。一、十、百、千、万、十万・・・。十万!?

 

「おおーっ!」

 

「あっ!!」

 

「うおーっ!」

 

「おっと、川越高校の鑑定額は100,000円です!」

「おっしゃーっ!」

 

「ヨッシャー!!」

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!!」

古賀は、渡辺さんのいる方に向かって二度の礼をした。2人もそれに続いて礼をする。喜びのあまり、古賀は夜空を仰いでのガッツポーズ。

「先生、これはどういったものなんでしょうか?」

「これはですねえ、江戸時代後期に作られた泥人形ですね。残念なのは、この兜が折れちゃってるのよねえ。でもね、いいこと?お人形ってのは顔が命だから、ほらこれ、染み1つないでしょ?これが買えますね」

 

「よかったですねえ、川越高校。お父さんにもう一度お礼をしてね」

そのとおり、3人はもう一度深く礼をして1位の席に向かった。

「さあ、川越高校が1位に踊り出ました」

このテの関門で1位になれるとは、クイ中達も全く予想していなかった。渡辺さんに感謝しつつ、ルーペ越しに現れた価値を助けにして、次の関門、本当の問題に挑む。

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