中部大会決勝、西日の中、水煙の中。

2011年1月10日 § コメントする

通気性の全くない、カッパのようなつなぎを渡される。

 

「・・放水や!」

押金はなぜか嬉しそうだ。

「そう、書き割りにはめ込まれたあの火の絵が描かれたスイッチを放水で倒せばブザーがパン!と」

「ふっふっふ。よっしゃ、松坂屋での 訓練の成果を見せたるで、かっちゃん!」

「おー、いくかお っしー!」

 

古賀は1人話の流れについていけない。

「芸術鑑賞の日やったかな。松坂屋の屋上で送別会のリハやってたときに放水の遊具があって、それで遊んでたんよ」

と清水。

「全ては計画通りってことや」

と押金。

「準決勝とは逆に、三重からクイズを行います。ヘルメットは順番に使い回して下さい。」

「痛いね、様子見れへんな」

スタッフの説明に古賀がぼやく。

 

「まあしゃあないよ。それはむこうも同じやって」

と清水。そこに

 

「俺達の放水の腕を見せたろやないか」

と気合いの入った押金。

「それじゃ、クイ中3人行きますか。」

 

1号、2号、3号は拳を重ねて優勝への決意をさらに固くする。目指すは優勝、そして、そのあとのおいしい焼き肉食べ放題。

「こんなところで子供の頃の夢が叶うとは思わんかったわ」

「ほんま、小学校んときの社会見学以来やわ」

 

と、重い防火メットを着けた感想を語り合う古賀と押金。決勝のルールを説明すると、まず両チームは各々のやぐらの上にスタンバイし、問題を聞く。

笛が鳴ったらスタートして、ホースの所へ走り、ホースを取ったら所定の放水地点へ向かって再びダッシュ。構えをとったら後ろの消防士の人に「放水!」と叫ぶ。

水がきたら、数m先の書き割り(絵の描かれた板)に付いている火の描かれた的6つを放水で倒す。そうすればブザーが鳴って解答権を得、正解すれば1ポイント。誤答すると、相手の放水が始まるまでスタート出来ないというペナルティ。3ポイント先取で勝利、すなわち優勝である。

「古賀ちゃんはホースの右サイド担当、やぐらの一番奥にスタンバイして。」

「了解」

「おっしーは一番手前、放水の合図もよろしく」

「OK」

「ルールはわかった!?きちんと聞いておかないとさっきみたいなことになるよ!」

「ア、ア、ア、ア!ア!ア!テスッ!テスッ!テスッ!」

 

チーム押金に清水の指示が飛び、会場には富田プロデューサーの鋭い声が走り、スピーカーからは福澤アナのマイクテストが響きわたる。

「俺、高いトコだめなんだよなー」

というリーダーのぼやきと共にチーム押金はスタンバイにつく。再び拳を重ねたクイ中達の眼の先にちらっと映るの は決勝の相手、桑名高校

「それでは、高校生クイズ中部大会三重県決勝、川越高校対桑名高校。まずは川越高校リーダー押金君、どうですか、今の心境は?」

「緊張してまっす!」

「そーは見えないけどねえ。」

「よく言われまっす!」

清水や古賀は押金のコメントに笑顔を見せながらも、自らの動きを頭の中でシミュレーションする。

「とにかく動いて、その途中で『わかる』って叫んでこ。わからんかっ たら水かけてる間に考えればいいんだし。」

清水の作戦にチームはうなずき、決勝第一問を待ち構える。

 

「問題、今年開かれるシドニーオリンピック・・」


痛っ!またオリンピックか・・!

 

「・・その聖火リレーのスタート地点となった、世界最大級の一枚岩は?」

 

・・・!

 

ピー!!

 

「わかる!!」

 

笛の音を合図にして、古賀の叫びと共に押金チームは[出動]する。

ホースをとり、放水ポイントへ。

 

「放水!!」

 

放水担当指揮官、押金の声に水の弁が開けられ、ホースに重さが加わる。

桑名は・・?

水の圧力を支えつつ、相手サイドを一瞥する古賀。

 

・・まだ動いていない!

 

「もう少し右や!」

「倒した!?」

「いや、まだ!」

「・・よしっ、倒れた!次、その下っ!」

 

・・パンッ!よし!

 

「川越高校、答えは?」

「エアーズロック!」

 

ティロリロ ーン!

 

「正解!川越高校1ポイント先取です!」

「おっしゃ!」

 

チーム押金は手を叩き合って次の問題を待つ。

「問題、『釣り好きの人には悪い人はいない』と唄っている、モーニング娘。のヒット曲のタイトルは?」

今度は両チームが笛の音と共にホースを携えて駆け出す。

 

「わかる!」

再び古賀の叫び声。

「放水!」

吹き出す水。

 

「古賀ちゃん、答え何?」

「恋のダンスサイト!」

「えっ!?」

「・・ごめん、違うわ!ハッピーサマーウエディングや!」

 

桑名高サイド、今度は答えがわかっているようだ。

 

ものをいうのは放水の腕

「ん?ちょっと手間取っている様子です川越高校。」

 

耳に届く福澤アナの声。風に煽られ狙いが定まらない。

 

「少し右!」

「行き過ぎ!!」

「よし、そこ!!」

 

パンッ!

 

「川越高校!」

 

(よしっ、『恋のダンスサ・・』いや、違う、ええと・・)

記憶がブラックアウトした古賀。

 

与えられた時間には限りがある。

「川越高校、答えは?」(頼むぞ、古賀ちゃん)

 

押金はここで古賀のそそっかしさが出ないかと心配する。

 

「・・ハッピーサマーウエディング!!」

「正解!」

 

ちなみに、古賀はモーニング娘。のファンではない・・・。

 

「問題、今年の防災標語、『火をつけた、あなたの責任』さて、何まで?」

三度走るチーム押金。

 

「わかる?」

「わからん!」

「火元まで、かな?」

「どうする?」

「やめとこ。わざわざ間違えに行くこともないわ。これは向こうに答えさせとこう。」

 

と、的を外すことを決定。

「今回は両チームとも手間取っている様子です。」

 

(・・くっ、考えるこたあ同じか!?)

 

「中断!!」

 

富田氏の声。

 

 

「川越高校、わざと狙わなかったんですか?」

「ええ、まあ。」

「わからなかったらわからないと言って下さいね。水がもったいないですから。」

 

・・恐らくこの場面もカットの対象になると思われる。

 

「問題、ダックスフントの原産国は?」

「放水!」

「どう思う?」

「イギリス・・自信はない。」

「よし、イギリスでいこう。」

 

パンッ!

 

「川越高校」

 

「イギリス!」

 

・・ブー!

 

「あちゃ!ごめん!」

「川越高校、スタートにハンデがつきます。」

「しゃあない、1点くらいはやっとこ」

 

と古賀を励ます清水。

「問題、野球のホームベース、対角線の数は?

桑名高校が走り出す。

「放水!」

ピー!笛が鳴り、川越高校もスタートを切る。

 

「放水!」

「かっちゃんわかった?」

「ちょっと待って。今考えとる」

 

桑名高はわからないのか当たらないのかブザーが鳴らない。

「古賀ちゃん、ちょっとホース任せていい?」

「おう。じゃあ最後の一枚は待つわ」

素早く5枚を倒した川越は、最後の一枚を残そうと放水を微妙にずらしていた。そこに、不意に強い風が吹き始める。

 

パンッ!

 

「しまった!」

 

全ての板が倒されてしまった。

「かっちゃんわかった?」

「ごめん、わからん。」

「おっしーは?」

「わからん。」

「・・しゃあない、勘でいくわ。」

「川越高校、答えは?」

 

・・5か?6か?焦りで、簡単に浮かぶはずの図 が思い浮かばない・・・。

 

「6!」

 

・・ブーッ!

 

「残念、正解は5です。川越高校にはまたしてもハンデがつきます」

 

・・・大丈夫、まだ2対0だ。落ち着いていけ・・・。自らにそう言い聞かせ続ける3人。

「大丈夫、答えられない訳じゃないし、それにあっちは放水があまり上手くない。まだ向こうは0点だから、少々のハンデぐらいひっくり返せるって」

と、清水は2人を励ます。

「問題、日本料理で、お通しは酒の肴。では、お造りは一体なに?」

 

桑名高が走りだし、ホースが水で膨らむのが見える。ピーッ!川越、スタートの合図。

(スタートの遅さは、腕前でカバーする!)

「放水!」

押金の声で川越側のホースにも水が通いだす。

「なんやっけ!?」

「刺身やろ!」

「あっ!それやそれや。刺身や!」

「よし、向こうはそんなに早くない で。落ち着いて、も少し右や!」

「ああもう!水飛沫と西 日でよく見えんぞ!」

「さあ、非常な正確性を誇ります川越高校です」

 

そんな福澤アナの声が聞こえてきた。

「・・よし、倒れた!次が最後やで」

・・・パンッ!

 

「川越高校!」

 

・・(よし、自信を持って行け。この問題で決める!)

古賀がマイクの前に立つ。

 

「川越高校!」

 

「・・刺身!」

 

・・ティロリロン!

 

「ファイヤー!!」

 

「よっしゃー!!」

 

「三重県代表は、県立川越高校に決定!」

 

肩を叩き合って喜ぶチーム押金。もしかしたら、と思ってはいたが、まさかここまで来てしまったとは・・・。

 

「決勝まで行けたこと自体凄いことやけど、優勝ってのは望みが大きすぎるよね。」

 

夕暮れ時、連絡がないクイ中達の決勝での結果を案じる川越クイ研タワーズ組。

「あれだけ熱中しとったでさ、ショックも大きいと思うんよ。やでさ、<決勝どうやった?>なんて聞かないでさ、みんなで笑って焼き肉食べに行こうよ」

皆がその案にうなずく。そうさ、結成後初めて参加した高校生クイズでいきなり決勝まで行けたなら、それだけで十分胸を張れる・・・。

「一緒にこの大会に出たクイ研のメンバーの期待とか、僕達を応援してくれた学校の人達、特に無理を言って図書室に本を入れてもらった司書の上原さんへの恩に、こういう形で報いることができたことがとても嬉しいです」

「全国大会に向けて一言」「ここまで来たからには行ける所まで  行ってみたいです」

「それじゃあ最後に、カメラに向かって、その上原さんにお礼を言ってみましょうか。では、3、2、1・・・」

上原さんありがとう!!

 

スタッフが手で示した合図に合わせてクイ研の恩人に礼を言う3人。

「・・はい、ありがとう。それじゃ、表彰式までここらで休んでて。」

取りあえず、休むためにも早く水分を口に入れたい3人。

ふと、眼の先のテントに冷茶を見つけ、そこに歩み寄る。

「これ飲んでもいいですよね?」

「どうぞ」

「よし、飲も。浴びるほど飲も」

「・・うまい!」

押金と古賀が2杯目を飲んでいるとき、ある消防士が本田アナにサインをもらうのを発見。

我々ももらおう、ということになる。しかし、紙がない。

「この紙コップでいいやん。」

「よし、行くか。」

テントの中、中京TVの本田恵美アナの背後に、今何かと話題の17歳とおぼしき青年が2人・・・。

「すいません、本田さん、サイン下 さい。」

「いいですけど、紙は?」

「ないんでこの紙コップ にお願いします。」

「それじゃ、ペンあります?」

「ペンならありますよ。」

「あ、どうもすいません。」

 

2人がスタッフからマジックを受け取ろうとしたそのとき、

 

「いま収録中だから、そういうのは後にしてくれる?」

 

との声が背後から響く。

 

・・怒られた。

 

2人は平謝りで、逃げるように清水のいる芝生へと戻る。

 

「・・そやもんなー、仕事中やもんなー。」

「うちらが子供やったなあ。」

 

己の行動の甘さを反省する2人。眼の先では、長野県代表を賭けてのクイズが繰り広げられている。・・はしゃぎすぎたなあ。と、反省する押金の方へ向かって歩いてくる本田アナ。手には紙コップ

 

「あ、ありがとうございます!」

 

と、礼をいう押金に向けて、笑顔を残してテントに戻る本田アナ。

 

「いい人やね。」

 

押金が生まれて初めてもらったこのサインは、ただの記念品に留まらず、見る度に自戒の念を呼び覚ます思い出の品となる。
「何年生ですか?」

「3年、バリバリ受験生。」

「あ、よかった、敬語使ってて」

 

川越と同じく優勝を決めた、静岡県立磐田南高校と長野県立松川高校のチームと談笑する清水達3人。

 

「長野からだと遠かったでしょ?」

「うん、でもうちは長野でも割と南の方だから」

「あ、そうなんや。」

 

古賀の頭には、名古屋で一泊するという長野県2位、屋代高校チームのことがよぎった。

北と南ではこうも違うものなんだなあ。

 

「磐田も遠いでしょ」

「結構ね。そっちは?」

「うちは三重とはいってもだいぶ北だから。20分もあれば余裕で名古屋。ただ南の方は交通の便が悪い。今回も伊勢より南は来てなかったみたいやでねえ」

 

と、そこへ岐阜北高校チームがやってくる。その3人も加わって、様々な話に花が咲く。

「ん?愛知終わった?」

「どっち勝った?」

「・・・ナース姿の学校、・・桃陵だったっけ、そっちが負けた みたい。中村高校が勝ったんやな」

「今何時やろ?」

「わからん」

「表彰式か、やっと帰れるな。みんな待っとるやろなあ」

「こんな3人が生徒会役員ですか・・・。松川高校の来年の受験者数が減らなければいいんですが・・・」

 

表彰式にて、福澤アナと松川高校での結びの一言。

「それでは、三重県の優勝校、県立川越高校です。おめでとう」

「ありがとうございます」

チーム押金はライオングッズ詰め合わせと、記念腕時計(福澤アナ曰く、なかなかいい品らしい。実際、なかなかいい品。)を受け取る。

 

「それじゃあ川越高校のリーダー押金君、改めておめでとう」

「ありがとうございます」

「君もまた焼けてるねえ」

「はい!」

「ところで、今日の僕の登場のときの演出、どうだった?」

「んー、まあまあ。」

「はい、ありがとうございました!それじゃあ最後に、みんなでカメラに向かってズームインでファイヤー!といこうじゃないですか」

(え!?ほんとに終わり?おーい、おっしー!)

 

とは後ろに控えていた2人の心の叫び。

 

「ファイヤー!ってやったら、少し静止しててね。放送ではスーパーがジャジャーン、と入るハズだから」

・・・3、2、1、キュー

 

「ではみんな、全国大会も燃えていくぞ!ファイヤー!」

 

「ファイヤー!!」

収録が終了。クイ中3人は、クイ研憧れの福澤アナをつかまえて、握手をねだる。

近くで見るとやっぱり背が高い。清水は福澤アナの二の腕を見れて満足したらしい。

日が沈み始めていたが、まだ西日は強かった。

 

クイ中達はついに全国大会への切符を手に入れた

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

これは何 ?

川越高校クイズ研究所大会参加記録 で「中部大会決勝、西日の中、水煙の中。」を表示中です。

メタ情報

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。