夕暮れの原地区、モノクロの光景だけを手がかりに。

2011年1月10日 § コメントする

高校生達が説明を受けているときに、会場にいた人々は帰宅したようである。

「それでは家探し、スタート!!」
羽鳥アナの掛け声で、各チームはぞろぞろと公民館前広場をスタートした。押金が荷物持ちを進んで引き受けて、それを背に負っていた。古賀はまず、その荷物の中に入っていた筆箱からルーペを取り出した。

「この古さやと、知ってるのは年寄りの人くらいかもしれんやろ。目が悪い人やったらあかんでね」

そう言いながら、彼は地図と写真を手に取った。

「とりあえず、ここから一番近いこの家からやね」

清水は古賀の持つ地図を覗き込んでから作戦を確認した。

 

「そうそう。ローラーの第一目標やで」

 

ローラー』は押金お気に入りの言葉らしい。坂道を下ると、すぐにその家はあった。他のチームはその家の前のT字路を曲がっていくだけで、まだその家にアタックをかけているチームはなかった。

「よし、それじゃ行こうか」

この番組が今日ここでロケをすることは恐らく知れ渡っているだろう。だが、いきなりこんなアロハの3人が来るってことはどんな風に受け取られるのだろうか?

「こんばんはー!」
「こんばんはー!」

「おじゃましまーす!」

そんな緊張や挨拶の声と共に、古賀は扉に手をかけた。

「あのですね、ちょっとお伺いしたいんですけど、こちらの方がどなたかわかりますかね?」

 

我ながら妙な敬語だ、そう思いながらも、古賀はポケットのルーペを差し出した。

「・・・こりゃヨシオじゃねえか?」

「・・・?どちらのヨシオさんですか?」

老人は、なおも古賀の小さなルーペ越しに写真を覗きこむ。

「おじいちゃん、コレ」

と、家族の方がもっと大きなルーペを差し出した。

「・・・おお違う、こりゃあコウイチだな」

「・・・?どちらのコウイチさんですか?この地図で言うとどのあたりに?」

と、古賀は愛用のペンを渡す。

「ここの、[渡辺公一]だな」

その通りなら-恐らくその通りだろうが-ローラー作戦はここに終了である。

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「おじゃましましたー!」

と、アロハの3人組は足取りも軽くそのお宅をおいとました。
原地区の道を歩くクイ中達。すれ違う各チームにも、そして自分達にもカメラがそれぞれ付いて回っているのにあらためて気が付いていた。

それは、それだけのチームが脱落していることの証明でもあった。今日は本当に御飯を食べてゆっくり休むだけで終われるのだろうか?そんな不安はあったが3人の歩みは軽く、歌を口ずさむほどであった。

 

「『愛したのはー[ほんとにー]♪』やって」

「絶対に違うって。『愛したのはー[確かにー]♪』やって」

「ええ?そうやっけ?」

ふと思い浮かんで口ずさまれていたのは、オフコースの[さよなら]であった。その歌詞のサビの部分で、清水と他2人の記憶が食い違っていたのである。

「愛したのはー確かにー♪・・・ああ、そうなんかなあ?」

「うん、そう。絶対にそう」

とりあえず、意見の一致をみる。こんなところで[さよなら]とは縁起が悪いのもいいところだが、クイ中達にとっては「いい曲はいい」のであって、縁起など二の次であった。こんな会話も収録されているのだろうか?少しはうしろのレンズを気にしながらも、彼らは少しずつ目標である[渡辺]さん宅に近付いていた。「ここを右やね」「OK」日もだいぶ低くなって暗くなった脇道だったが、後ろに引き連れたスタッフの照明に照らされて、とりあえずつまずく心配はなかった。

「ん?たぶんあの家かな?」

「よし、着いたね」

どんな人なのだろうか?不安も混じりながら、3人は渡辺さん宅の玄関をくぐった。

「おじゃましまーす!」

「こんばんは-!」

「こんばんはー!」

奥から、ご主人らしき人物が出てきた。清水はその顔を見て確信した。

 

 

-この人だ・・・-

 

「ちょっとお伺いしたいんですが、こちらの写真に見覚えはありますかね?」

「あぁ私です!」

「やったー!」

「泊めてください!」

「お世話になります!」

歓喜の声と共に、クイ中達は渡辺公一さんの手を握った。

 

「自己紹介もせずに上がるのかい?」

 

スタッフの声。もっともな話である。

 

「三重県の川越高校から参りました、押金康作です!」

「古賀洋輝です!」

「清水克樹です!」

「それじゃこちらにどうぞ」

 

 
モノクロの光景だけを手がかりに、思いもかけないほど早く目標の家にたどり着いたクイ中達。今日はこれで本当に終わりなのだろうか?そんな不安もあったが、それよりも空腹の方が勝っていた。

笑顔で迎え入れてくれた渡辺さんに深く深く感謝しつつ、お宅に上がりこむ3人であった。

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