新潟から群馬、トンネルを抜けるとそこは山国。

2011年1月10日 § コメントする

乗り込んだ列車内は、微妙な込み具合。先客の人々の中には一行に向かって、どこのどいつだ?と言いたげな視線を投げかけてくる人もいたが、あまり気にせずに着席しようとする。

クイ中達も席を探すが、その車両には4人がけのボックス席が並んでいて、どのボックスにも大抵1人が座っていた。

 

「すいません、ここ、よろしいですか?」

 

仕方がないので、引け目を感じつつも、ある男性に相席を頼み込み、ようやく着席。天満さんは、各チームに朝食を配り始めた。透明なパックに入った朝食は、おむすび2個と、なぜか鶏の唐揚げ1つ、そしてウーロン茶である。

食事時間の飲み物は、スポンサーの関係からか今までジャワティやポカリスエットが配られていたが、ストックが尽きたのか、そんなことは元々どうでもよかったのか、全く別の会社の製品であった。

 

「…絶対足りんぞ」

 

古賀のそんなぼやきを、他の2人はそりゃそうだろうと思いながら聞いていた。しかし、グチっても得るものはないので、古賀も観念しておにぎりを口に運び始めた。

 

「これは魚沼産?」

「ふふ、どうなんやろねえ?」

 

相席の男性が降り、やっとリラックスし始めた3人。次の駅辺りで地元の女子高生達-もし中学生だったのならば、かなり老け顔ということになる-が乗ってきたのに古賀は気付いた。

とりあえず、彼女らを見て思うことは幾つかあったのだが、聞こえてしまうとアレなので、しばらく黙っておくことにした。押金にとっては、そんなことよりもトイレに行くことの方が重要問題となっていた。

 

「すいません、降りるまであとどのくらいですか?」

 

「どうしたの?」

「いや、トイレに行きたくなっちゃって」

 

「あ、おっしーも?俺もなんやけど」

 

天満さんに尋ねた押金に、古賀も同調する。

 

「ちょっと待っててね」

 

と、彼女は他のスタッフに相談しに行った。

 

「また古賀ちゃんトイレかー?」

 

と、清水。

 

「なんで?おっしーもやん」

 

「古賀ちゃんと一緒にしたらあかんよ。おっしーはまだ1回目やろ?」

 

「そうやて。一緒にせんといて」

 

「・・・は~、またイジメや」

「え?イジメってのは心外やな。そんなんうちらに対するイジメやん。なあ、おっしー?」

 

「なあ」

 

「はいはい、ごーめーんなさーいー」

 

結局いつもの負けパターンにはまった古賀がキリのいいところで白旗を揚げたとき、天満さんが戻ってきた。

 

「もう少ししたら通過待ちでしばらく停まるらしいから、そのときに行っておいで」

「はい、ありがとうございます」

 

「で、停車時間は?」

「大体5、6分」

 

「トイレはどこに?」

「階段上って、右に曲がって、左手の階段を下りたホーム」

 

「よっしゃ、行くぞおっしー」

「おう!」

 

「急いでねー」

 

「はい」

 

矢野さんに道順を聞いて、トイレにダッシュ-時間以外、特に切羽詰まっていたわけではないが-するクイ中2号と3号。まず階段を駆け上がる。

 

「右やな。どの階段を下るんや?」

 

越後湯沢駅、JR上越新幹線も停まり、冬にはスキーで賑わう駅である。

 

「あっち、表示があるわ」

 

 

 

「急げー!」

 

と、今度は駆け下りる。

 

「あった!」

 

ここまでで、大体1分半である。

「セーフ!」

「よし!間に合った!」

 

出発までに余裕を残して、2号と3号は無事帰還。

 

「みんないるね?」

「はい」

 

列車は再び出発した。走ること大体3分、列車が次に停まったのは、岩原スキー場前駅。スキー場前と言う割に、先程の女子高生を含めてかなりの数の高校生が下車していく。列車の扉が閉まり、動き出した風景の中で固まって歩くガン黒女子高生を見た古賀は、押金に呟いた。

 

「秋田とか、新潟とか、こういう雪の多い地方には、色白の美人が多いって聞いてたんですけどねぇ」

「ホントですねぇ」

「それじゃ、次の駅で降りるからね。荷物まとめて、忘れ物のないように」

 

そろそろ降りるとは聞いていたので、既に荷物はまとめてあった-と言ってもこの車内では一度もカバンを開けていない-3人。さて、どんな駅なのだろうか?と考えていた矢先、いきなりトンネルへ。

ここまでに結構な数のトンネルがあったためにそれほど気にはしなかったのだが、それでもかなり長いトンネルである。

 

「あ、もう群馬入りなの?」

 

時折蛍光灯が光を覗かせる、車窓の外の壁を見ていたクイ中達は、光に照らされた[新潟⇔群馬]という表示を見つけた。新潟と聞けば、県民の方々には大変失礼だが、東京からだいぶ離れているような、つまり、旅の終わりからはまだまだ遠いような気がした。しかし、群馬と聞けば、一気に東京に近付いたような気がする。

そう、既に、とうの昔にこの旅は折り返しているのである。勝ち抜けるにしろ、脱落するにしろ、始まりよりも終わりの方が近いところまで旅してきたことを考えると、3人の胸には驚きと寂しさがやってきた。

楽しい旅、素晴らしい旅ほど、終わりが近付くごとに何とも言えない思いが大きくなっていくものである。だが3人は、それぞれその思いを口にすることなく、自分の胸にしまいこんで、次の関門に向けての覚悟を固め始めた。そんな思いと裏腹に、列車を新しい光が包み込み始めた。名実共に、群馬県入りである。

 

トンネルを越えると、そこは山国。空の雲は白く、山の頂きは青かった。

周りの木々も緑鮮やかな一筋の線路、そこにまた、1つの駅。誰かが乗り込むことはない。

 

周知のことだが、この旅は非情なものである。駅がある限り、誰かが降りなければならない。

 

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