東京、神奈川、そして東京。

2011年1月10日 § コメントする

「おっしーと古賀ちゃんは左側見といて。僕は右側見とくから。何かあったら迷わずにメモして」

「オッケー」

多摩川を越えて神奈川県に入ったFIRE号。

 

[クイズ正解の車窓から]と銘打たれた、富士山の見える方向を問う二択クイズ。

「まさか富士山の下手なレプリカが置いてあるとか」

という憶測も飛び交う。

「今新幹線はこの電車の右側を走ってる」

「石油タンクが右側にあった」

「変電所もメモしといて」

目に付くものを片っ端から書き留める川越。電車は川崎を通過。2時30分過ぎ、鶴見で停車する。何が起こっているのか?乗客の高校生達には何も知らされない。下車する気配も全くない。

「みなさん、駅を利用している方々に手を振ってみましょう。笑顔でねえ。あ、あのお母さんとお子さんはやっと気付いたみたいですねえ。あの子もいつか高校生クイズに出場してくれるんでしょうか?楽しみですねえ」

福澤アナの語りが車内に響く。

「アナウンサーの仕事も大変ですよ。こんなときもずっとしゃべり続けて場を保たせなければいけないんですから。え?それが楽しそうと思う方は日本テレビのアナウンサー試験を受けてください。たぶん私も面接官の一人としてそこにいますから。・・・話すこともなくなってきましたねえ。それじゃあ彼に何か演奏してもらいましょうか」

と、福澤アナは本荘高のウクレレ奏者に1曲を求める。今度はそのウクレレによってハワイアンな曲が奏でられ、車内は拍手の嵐となる。

 

「いやあ、ありがとう。それにしてもまだ動かないんでしょうか?上空を飛んでいるヘリコプターや、外のお客さん達には何が起こってるのか分かっているのでしょうか?」

 

何か仕掛けてくるのか?首都圏ゆえのダイヤ調節か?答えはどちらかのはずなのだが・・・。そう古賀が考えていたとき、電車が動き始めた。・・・何かが違う。普通、停まっていた電車が動きだすとき、体は進行方向とは逆に傾くはず。そう、今の状態ならシート側に・・・。

 

「おおっと!これはどんでん返し、FIRE号は鶴見駅でいわゆるスイッチバックを行いました!つまり、進行方向に対して左右が逆になったわけです!」

「・・・やられた!」

呪いの声があがった。こんなに早く仕掛けてくるとは・・・。
清水は空腹に襲われていた。無論、他の2人も。車内の時計を見ると、昼飯というよりも、むしろ3時のおやつに相応しい時間帯である。

「長いトンネルですねえ。都心にこんなトンネルがあるなんて知りませんでした」

嘘かまことかは置いといて、福澤アナも驚くほど長い時間トンネルの中を走るFIRE号。もう1回スイッチバックはないものか?そんなことも考えていた。山梨側に行くのなら、そうでもしないと進行方向右側(元左側)から富士山を拝むことはできない。それにしても、食事は出ないのだろうか?こっちは朝食以来何も口にしていない。

「さて、みなさんお腹もすいたでしょう。みなさんにお弁当と飲み物を配ります。電車の旅といえば駅弁ですからねえ。これ、特別発注で結構高いんですよ。3人で分け合って食べてくださいね」

スタッフの人々が各チームに大弁当箱1つとご飯3つ、そして飲み物を配給する。確かに値が張りそうな弁当だ。大きい、というよりも大きすぎる。怪しい、それもあからさまに。

 

「それじゃあトンネルを出たらみんなで頂きましょう」

「・・・でかいねえ」

「うん、でかいねえ」

 

問題を予感し、怪しげな大弁当箱(だかなんだか)をにらむクイ中達。しかし、どうしても食欲が先行してしまう。

「それじゃ、頂きまーす!」

「いただきまーす!」

 

箱を包むビニールがなかなかほどけない。あちこちで何やら声があがる。テープをはずし、フタを開ける清水。中身を心待ちにする押金、古賀。川越高校クイズ研究所所属の3人が見たものは・・・

「何やこれ?」

「あからさまに怪しいやん」

「こりゃメモとっとかな」

と、古賀がメモ帳を取り出す。

 

「これいくつあるの?」

「ちょい待って。・・・5×10で50マスあるわ」

だいたい5cm四方のマスひとつひとつにそれぞれ異なるおかずが入っており、縦5×横10、計50個で並んでいる。

「ワカメ、タコ、ウズラ、枝豆、オクラ。ラッキョ、リンゴ、それなんやろ?ホウレンソウ?ちょっともらうよ。・・・サラダ菜かな?レンコン、ロールキャベツ、ヤマイモ、インゲン、これ何?ちょっともらうよ。・・・何やろ?ユバ?ユバってこんなん?」

「・・・ユバやと思うけどなあ」

「じゃあそうしよ。ええと、エノキ、それは?もらうよ。・・・甘っ!なんで弁当に羊羹が入っとるん?・・・マカロニ、ミツバ、ご飯か、これ?」

「麦が入っとるで」

「じゃあ麦飯かな」

「古賀ちゃん、メモったのから食べてっていい?」

「ええよ、リンゴは頂戴ね。明太子、もやし、ハンペン、ヒジキ、ブロッコリー、ベーコン。あ、今度こそホウレンソウや。ナスの油炒め、ニンジン、これネギだよね?ちょっと確認してくれん?ネギはあかんのよ」

「・・・ネギやで」

「その下のもネギっちゃう?」

「・・・ネギやね。こっちは焼いただけみたい。上の方は味噌和えにしてある」

「ネギ味噌と焼きネギにしとくか、一応。海苔の佃煮、ダイコン、チクワ、・・・それは?・・・鶏肉か。ツクネ、と。これは?かき揚げかな?確認しといて。トマト、サトイモ、シイタケ、スイカ、・・・これはセロリか。・・・魚肉のソーセージ、カマボコ、キュウリ、グリンピース、・・・それは?」

「ケーキでしょ、普通の」

「じゃあ、とりあえずケーキとしとこう。コンブ佃煮、アスパラガス、イカ、梅干し、エビ、オカラ。・・・よしっ、メモ完了。やっと飯が食える」

「ご苦労さん。これ絶対クイズに関係あるはずだから、食べ終わったら暗記するよ」

「了解」

それなりに味はいい。こんなに面倒なつくりなら、そりゃあ値段も張ることだろう。

「古賀ちゃんはメモした順に、おっしーは真ん中辺り、僕はメモの逆に覚えていくから」

八王子に一時停車中のFIRE号。

「高校生達は昼を食べられても、スタッフはまだ食べられない」

と、山名さんは言っていた。長めの停車だが、今度は本当にダイヤ調節らしい。

「あ!!」

弁当メモと、その写しを見て暗記に励む川越。そんな中、清水が不意に叫んだ。

「どうしたん!?」

と、隣の古賀。清水は声を落として押金と古賀を近くに寄らせる。

「どうしたん?」

清水につられ、2人の声のトーンも下がる。

「ちょっと凄いことを発見してまったかもしれん」

「なになに?」

「これよく見て、アスパラ、イカ、ウメボシ、エビ、オカラ・・・。カマボコ、キュウリ、グリンピース、ケーキ、コンブ・・・。こう読んでくと五十音の順なわけよ!」

「・・・すげぇ!かっちゃん、あんた偉いよ!」

「惚れたで!」

清水の発見に、2人は驚きを隠せない。

「よく気付いたねえ」

「いや、憶えやすいように頭文字だけを抜き出してたら気付いたんさ」

「ほんとに偉いわ。・・・それやとところどころおかしいのがあるよね?」

「そう、それなんだよね。かき揚げとか、このネギ2つ。下の方は焼きネギじゃなくてただのネギにしても辻褄は合うんだけど、上の方がねえ」

「・・・あ!これかき揚げじゃなくてテンプラっちゃう?」

「おお、それいいね。後は、サラダ菜、タコ、そしてネギか・・・。」

 

既に列車は八王子を後にしていた。なんだ?頭文字はわかっている。五十音になっているのは確実だ。あと3つ・・・。

 

「みなさん、お弁当はおいしかったですか?」

 

・・・!?

 

来た!

 

「ここで、みなさんが食べたお弁当のおかずを思い出して頂きましょう。弁当思い出しクイズ!」

 

スタッフがフリップを配り始めた。

 

「・・・メモ見てもいいんかなあ?」

「一応伏せとこ、不正になるといかんで。とりあえず聞いてはみるけど」

 

川越の手元にもフリップが届いた。

「それでは、制限時間は15分間。弁当思い出しクイズ、始め!」

「よし、とりあえず梅干し」

「イカとエビもあったね」

と、そこに演出の遠藤氏が通りかかった。

 

「あの、メモは見てもいいんですか?」

「いいよ。メモしようと思い立ったのは君達の実力なんだから」

「よっしゃ、おっしーメモ出して」

「オッケー」

「自己申告までしたかあ。成績はどうかなあ?」

 

と、遠藤氏は川越のフリップとメモを覗くと、後ろの車両に歩いていった。

「・・・タコじゃないよなあ」

 

メモに従ってほとんどのマスが埋まったが、50音から外れている3つのマスは未だに埋まらない。

 

「・・・おっしー、イイダコって言うよね?」

 

清水が思いついた。

 

「あ!イイダコか!あるある!」

「何、イイダコって?」

「駄菓子とかにあるんさ」

「へえ、じゃあ後2つか」

 

サラダ菜じゃない。しかし、苦味とクセのある味だった。

「・・・!ルッコラって知ってる?」

古賀はあまり馴染みのない名前を口にした。

「名前は聞いたことある」

「確か香草の1つだったと思う。食べたことないけど、[ル]で始まる野菜はそれくらいしか思いつかへん」

「もう少し考えよう。まだ時間はあるで、危ない橋を渡るにはまだ早い」

 

清水はそう言った。・・・ル、ル、ル、・・・決定的なものが思い浮かばない。ルッコラ・・・これがルッコラだ、なんて言われて食べた記憶がない。カバンから、重いにも関わらず持ってきた国語辞典を取り出し、[ル]の項目を調べてみる。「[ル]かあ」押金もつぶやいた。ほんとに馴染みのうすい野菜だからなあ。古賀はひとまず[ル]を置いて、[ぬ]を考えることにした。[ぬ]が頭文字にくるネギ?そもそも俺はネギが嫌いなんだ。特に太い白ネギは。しかも味噌で和えてくれるなんてほんとに親切なことや。この、ネギのぬたってのは、好き嫌いのあまりない俺にとって最悪の料理の1つで、うちの母さんは、俺が食べれんと言ってるのに作る・・・。

 

・・・[ぬた]!?それならバッチリじゃないか!

「かっちゃん、[ぬ]は[ぬた]や」

「ぬた?」

「そう、ネギのぬた。俺の大っ嫌いな料理。これは自信ある」

「よっしゃ、あと何分や?」

「2分ちょい」

「・・・[ル]にはアレしかない?」

「うん、それしか思いつかない」

「さあ、残り時間はあと1分です」

「よし、それでいこう」

「・・・時間です!それではフリップを回収してください」

東京、神奈川、そして東京を再び走る特Q!FIRE号。しかし、東京といえどもそこは既に緑深い山の中。一体どこで結果が明かされるのか?どのチームが脱落するのか?列車はその疑問に答えることなく、先へと走りつづける。

四方津から酒折。扉の先にあるのは、やはり扉。
左手に相模湖を眺め、再び神奈川入りしたFIRE号。

「中央本線か・・・」

このまま甲信地方に突入、つまり富士山にだんだん近付いていくということだ。

「結局、あの富士山の問題って何なんやろなあ?」

このまま行けば、ほぼ確実に富士山を左手、つまり元は右サイドだった方に望むことになる。

「わからん。でも油断は出来んよ」

全く、この番組は秘密なことばっかりだ。無論、クイ中達の総論である。と、列車のスピードが落ちた。先ほど山梨入りしてすぐのことだ。

『みなさんお疲れさまです』

久々に福澤アナの声が車内に響く。つまり、何かが起こる。

『長いこと車内に閉じ込められていては健康によくないですね。みんなでおいしい空気を外で吸ってみましょう』

当然、誰一人としてこれを福澤アナの厚意とは考えていない。

『荷物はみんな忘れずにね』

と言われては尚更である。
中央本線、四方津駅。参加者全員が下車し、集められる。

「いやあ、外はいいですねえ。深呼吸してみましょう」

空気はなかなかうまい。だが、不安は一緒には飲み込めない。

 

「四方津駅の駅長さんです」

 

と、福澤アナが紹介。話によると、駅長氏は神奈川出身らしい。

「みなさんの中に、乗車切符がここまでの方々がいらっしゃいます」

 

予想済みとはいえ突然の発表。全員の悲鳴ともとれる声があがる。

「呼ばれた各チームには、それぞれの車両の扉の前に立って頂きます。駅長が『切符を拝見!』と言われましたら、『お願いします!』と言って下さい。扉が開けば旅を続けることができ、開かなければ、残念ながらそのチームはここで途中下車して頂きます」

「川越高校!」

「はい!」

思ったよりも早く呼ばれた。それが3人の感想だった。荷物を背負い、ここまで乗ってきたFIRE号4号車の扉前に立つ。まだ、この列車から降りるわけにはいかない。

「切符を拝見!」

駅長の合図がかかる。

「お願いしますっ!!」

扉よ、開け・・・!・・・プシュー・・・グーン、ガシャン。扉の先にはカメラが待っていた。

「ヨッシャーッ!!!」

ガッツポーズと共に、再びFIRE号に乗車する3人。客室に入ると、先客達の歓迎が待っていた。

「おめでとう!」

「オッシャー!」

ハイタッチが交わされ、生き残りを祝福し合う。川越も祝福の輪に加わって、後続を待つ。岐阜北や磐田南は大丈夫なのだろうか?そんな疑問がふと頭をよぎった。

「あのお弁当、開けてすぐに食べちゃったの?」

「はい」

「お腹すいてたんだねえ。エンゲル係数高そうな体格してるもん」

 

最初の途中下車チームとなってしまったのは、岩手代表盛岡一高と、和歌山代表近大附属和歌山高校新堀チーム。しかし、ダイヤの調節か、すぐには出発をしない。

『もう、終わーりーだねー♪君がー、小さく見ーえるー♪』

福澤アナの歌声がFIRE号車内に響く。

 

「おおっ?『さよなら』や!」

「こんなところで歌うとはなあ」

 

この日の朝に流れたお気に入りの曲が歌われ、喜ぶクイ中達。

 

『フーフフーフーンーンーンー♪ルールルールールールールールー♪』

 

「・・・歌詞知らんのや」

「そうみたいやねえ」

『チャカチャン、ズンチャ、ズンチャンチャチャン』

 

福澤アナは、ドラムの音も忘れない。

 

『さよならー♪さよならー♪さよならー、あぁ♪もうすぐー外ーは白ーいーふーゆー、うぅ♪愛したのはー♪確かにー♪きーみだーけー♪そのままーのー君ーだーけー♪』

「最後はきちんと歌うんや」

「そりゃそうでしょう」

 

そして、福澤アナのリサイタルが終わると、列車は動き出した。ここで『さよなら』。さぞかし無念のことだろう。・・・しかし、明日には、いや、明日とも限らず今日にも自らの身に降りかかりうることとは誰にも分かっていた。

『問題、武田軍の旗印は右?左?どっち?』

橋の下の川岸に何やら見える。

「・・・あの赤いのか?」

「武田軍の旗といやあ[風林火山]やろ?」

「左はどんなん?」

「わからん。見えやんかった」

「右のやつ見て『これだ!』って思った?」

「・・・いや、思わんかった」

「・・・よし、それじゃ左やな」

「OK」

『問題、今年の防火標語は右?左?どっち?』

「中部の決勝で身に染みとる!」

「余裕!」

 

窓の外に眼を向けるクイ中達。山梨を走るFIRE号。その車内で行われているのは[どっちどっちクイズ]である。ルールは簡単、問題によって定められている右か左の答えの内、正しいと思った方を選ぶ普通の2択クイズ。強いて普通でない部分を挙げるとするならば、一部の問題では選択肢が車窓の外に配置されているというぐらいだろうか。

『おっと?これは対向車が邪魔ですねえ、よく見えません。スタッフがボードを持って車内を回るそうです』

車窓の外に選択肢があるため、このようなこともままある。

『一万円札の福澤諭吉、ホクロがついているのは向かって顔の右側?左側?どっち?』

「財布出して!」

「ゆきっつぁんある?」

「僕の財布に入っとる!」

カバンを開け、清水の財布を取り出し、ゆきっつぁんこと福澤諭吉の顔を拝むクイ中3人。

「右やね」

「ですね」

 

『右と左、漢字で書いたとき、1画目を横棒から書くのはどっち?』

「・・・え!?俺はどちらとも横棒から書いてるぞ」

と、古賀。彼にとって、漢字の筆順はどうでもいいものらしい。

「左です」

確信を持って清水は答えた。

「え、まじで?」

「何で知っとんの?」

押金と古賀は、清水の確信に驚きを隠せない。

「一応、書道三段ですから」

と、清水。そうだった、と2人は納得した。

「凄えよかっちゃん!」

古賀は感服し、「惚れ直したぞ!」と、押金は意味深な発言。ちなみに、今のところ2人は危険な仲ではない・・・はず。やはり念のため。

『最後の問題。次のトンネルを抜けた先のカーブは右カーブ?左カーブ?どっち?』


「はあ!?」

「そんなん分かるわけないやん!」

 

文句を言いつつも、時刻表を取り出して路線表のページを開く。

「うーん、微妙に右に曲がってるように見える」

考えている時間はない。

 

「右、だね」

「うん」

かなり長いトンネル。長く感じるのは距離だけのせいではないだろう。暗闇の中の電灯を見るたびに、「出るか?」と思ってしまう。窓からは先頭の方がよく見えない。

だが、強い光が眼に飛び込んできた。こんどこそトンネルを抜けるようだ。右か?左か?窓の外は闇から光に換わり、3人はカーブを待った。体は、左に傾いた。

「・・・左か」

 

正解か、不正解か、唯一はっきりした問題だった。
カメラが4号車にやってきた。列車のスピードが落ち、そして停車する。カメラが来たということは、何かが始まる、ということだ。強いて例を挙げるとするなら、この車両からどこかのチームが下車をする・・・。

「うわっ!カメラが来たー!」

4号車のほぼ全員が、同じようなことを考えたようだ。車内に広がる声の内容もほとんど同じである。外を見るクイ中達。酒折駅、切符がここまでしかないチームはどこなのか?

 

『ここで下車するチームを発表いたします』

 

福澤アナのアナウンス。うなだれ、手を合わせて祈る3人。

『山形、米沢東高校!』

・・・安心するな。

『2チーム目!』

まだ、次がある。

『岡山、倉敷天城高校!』

組んだ手は、まだ解けない。

『以上2チームです!』

「よっしゃー!」

 

4号車で沸きあがる歓声、交わされるハイタッチ。

「ふー」ガッツポーズもつかの間、シートに深く身を預けるクイ中達。とりあえず、首の皮はつながったままか。

『2チームには敗者復活のチャンスが与えられましたが、復活することはできませんでした。残念ながら、ここでお別れです』下車チーム発表後しばらくたっての福澤アナの声。

「敗者復活?何をしたん?」

川越の3人は同じ疑問を口にする。しかしその問いは答えられることなく、FIRE号は2チームを置いて再び走り出した。

夕日の射す甲府盆地。そこを走るFIRE号の車内、座り心地のいいシートで眠る清水、外の景色を眺める押金、それまでのメモをつける古賀。デジタルカメラを持ったスタッフが清水に近付いた。

その目的は明白である。シャッターが押される。その映像を見せてもらう押金と古賀。「爆睡やな」と、笑いを堪える押金。「そやね」と、古賀。清水はまだ起きない。

少したち、ようやく清水起床。「爆睡しとったな、かっちゃん」「しっかり撮ってもらったで」「まじで?いつの間に?」「ついさっき」「やられたなあ」と、清水は悔やむ。不意に、「外のヘリコプターのカメラに手でも振ってみて」とのスタッフの声が飛ぶ。

車内の全員がその声に反応し、窓際に寄る。

品川を発って約6時間、下車したのは4チーム。扉が開いても、その先にも次々と別の扉が立ち塞がる。次の扉は何なのか?それは、全てのチームが抱えた共通の問題である。そして、それは誰も答えることが出来ない問題なのだからタチが悪い。

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