背中に赤い追い風を受けて。

2011年1月10日 § コメントする

8月10日、晴れ。

部活、課外となかなか集まることができなかったクイ中3人は、諸岡理事長以下、クイ研首脳部による召集を受け、クイズの演習がてら集まることになった。

「なんでわざわざ富州原のマックなんぞに行くん?」

「いいからいいから」

3人の問いは幸枝さんやよしめぐに受け流されてしまう。

「ま、行けばわかるか」

と3人は詮索をやめて何を食べるかを考えることにした。

「はい、それじゃクイ中も集合!」

昼食も一段落ついたところでクイ中3人は理事長達が座るテーブルに集められる。今日ここに集まったのは、理事長、よっちゃん、幸枝さん、よしめぐさん、あずちゃん、そしてクイ中3人。

一体何が始まるのか?何かの重大発表か?重大ってそんなに重大なことってあったっけ?そんな思いがチーム押金の3人の胸をよぎる。

「ええと、とりあえず3日後には東京にいくということで、みんなで3人のためにこれを作りました」

と、理事長達が取り出したるは3本の赤い団扇。手にとって見ればそれぞれ一人一人に宛てたメッセージが書かれている。

「うわ、ありがとう!」

「そのプリクラもきちんとテレビで映るようにしたってな」

団扇の中央には理事長、よっちゃん、よしめぐが写ったプリクラが貼ってある。

「古賀ちゃん、団扇に書いてあることきちんと守ってな」

「団扇に書いてあること?」

 

古賀はよしめぐからのメッセージを探す。[かっちゃんとおっしーの邪魔しち ゃだめだよ。]とある。首をひねるが、次の瞬間理解した古賀、

「了解。なんなら風呂で寝ますよ。」

と返す。

「東京かあ。おっしーとかっちゃん旅館でラブラブ?」

と言う理事長の言葉を即座に否定する2人。(記録班注:2人はそういう関係ではない。一応、念のため)

「ところであずちゃん、[福澤さんすてきー]ってなんなん?」

「あ、ほんまや俺のには福澤さんかっこいいー」って書いてあるわ」

「いいじゃない いいじゃない。気にしないで」

笑って返される。

「3人はこれからどうすんの?」

と、理事長。

「早押しボタンがあるから学校で練習しようかって思っとるんやけど。」

「そっか、頑張って。帰って[女同士](記録班注:昼の連ドラ)見やないかん。」

こうしてマックでの壮行会はお開きとなった。

再び集合場所だった学校へと自転車で戻るクイ中一行。

「今回のテーマは[旅]だったよね、おっしー?」

「そうそう」

リーダー、押金のもとに届いた書類によると、今回の全国大会のキーワードは[旅]だとのこと。

「昼前にネットで調べたときの通りやったな、かっちゃん」

「そやなあ。でも[旅]って言っても何するかやなあ。旅の問題がでるのか、ほんとに旅でもするのか」

「貸し切り列車の旅、食事は自炊、なんて情報あったよねえ。噂を耳にしたって書き込みやったけど、どっから仕入れてきたんやろなあ?」

「もし本当やとしたら関係者辺りから漏れたんと違う?」

「誰があんなん書き込んだんやろなあ?そや、おっしー、」

「ん、なに?」

「愛知の一宮高校って憶えとるやんね?」

「ああ、憶えとるよ」

「そこの言葉が掲示板にあったやんね、かっちゃん」

「あったあった」

「どんなん?」

「ええと、[やった覚えのないルール違反の濡れ衣を着せられ、何もせずに決勝に進んだ学校もある中、そのせいで決勝を目前にして何もできないまま負けてしまった。]みたいな内容だったかな」

・・・何もしないで進んだ学校、やっぱりうちらのことだよな、と3人は同じ様なことを考えていた・・・。

「準決勝と言えば、うちら結局本物の早押しボタン押してないんだよね」

と、話題を変えた古賀。

「そうそう。やっぱ本物はいい音が鳴るんだよ」

と、清水は惜しそうに言う。

「音にこだわるとはますますクイ中やな。 でも確かに決勝も放水クイズやったでボタン押せなんだもんなあ」

と、クイ中2号も惜しがる。

「決勝、聞いたってちょっと、僕ねえ、あの対角線の問題の屈辱を晴らすべく対角線を求める公式を覚えて、さらに計算めんどいで十角形までの対角線の数暗記したんやで。」

「そ、そりゃすげえや。ほんとに数字とか理系の問題が出たら頼むで、かっちゃん」

と、雪辱を誓う理系清水、期待する文系古賀。本物を押して正解し、自分達の実力が運ではないことを証明してやる。そのために、今日のところはウルトラクイズのレプリカのボタン(記録班注:理事長が持ってきたTOMYあたりがかつて販売していたヤツ)で力を蓄えてやる。クイ中達はペダルを踏み、そう遠くない学校を目指す。

8月13日、台風の襲来が危惧される。名古屋は曇り。

しかし、暑い。クイ中2号、チームリーダー押金の目覚めは「なんか今日は珍しく良かったんやわ」との言葉通り。クイ中1号、清水にとっては「いつもと変わらん」ものだったらしい。

家族全員九州に帰省し、誰もいない家を1人後にしたクイ中3号、古賀は「家族より先には家には帰らんでな」とのこと。

「かっちゃん荷物軽そうやなあ」

と、重そうな古賀。

「そんなことないけどなあ」

「なんで2人ともリュックまで持っとるん?俺、荷物少なすぎたかなあ?」

 

2人の荷物を見て押金は不安を口にする。

「大丈夫やて、おっしー。俺は憂いをなくすために備えすぎて、いつも重い荷物背負っとるだけやで」

と、古賀。彼のモットーは、<備えあれば憂いなし>である。3人は昼食にカツを食べるというベタな願掛けをして新幹線のホームへと向かう。重い荷物を背負った青年3人の姿は、清水曰く「上京し、デビューを目指すバンド3人」のよう。新幹線がやってくる。

「きましたね。」

「うん」

「他の県も乗っとるんやろか?」

「やろね」

「よっしゃ、行こか」

川越クイ研の思いがこもった団扇を携え、3人は東京へと向かう。

あの幸運ののぼりの色と同じ、赤い追い風を背中に受けて、クイ中達は同じ背中に負ったたくさんの思いに恥じない戦いを誓う。

そして、明かされる事実。

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「その時計はなんでもらったのー?」

「・・え、えーと、これは、ですねー・・・」

カニちゃんの、逃げ場を封じた鋭い質問にたじろぐ押金と清水。

(し、質問が的確過ぎるぞ!)

と、心の中でつぶやく押金であった。

(おかしいよなあ。いくらなんでもここまできて結果を聞かないなんて妙だよなあ。もしかして知っとんのかなあ?でもなんで?・・わからん。)

とは古賀の心の内で湧いた疑問。こればかりは面と向かって尋ねる訳にもいかない。

 

「もっちゃんとまどちゃん、もう先に食べとるって」

と、幸枝さん。

「そう。時間も時間やしなあ」

朝に桑名で会ったテニス部の2人(予選出場は出来なかったが、彼女らもクイ研メンバーである)は食事中と聞いて、そう返す古賀。

「もうすぐ桑名やね。古賀ちゃんも焼き肉行くやんね?」

「いきますよー。拒否されても勝手についていきます。じゃんじゃんばりばり食べます」

「大丈夫、拒否なんてせんから。」

電車は間もなく桑名駅に到着する。

(どこで  発表しよう?)と考える押金と清水。

(席、空いとるかな?すぐ食えるかな?)と、古賀。

(結局、どうやったんやろう?)と、理事長らクイ研首脳部。

(なんか、おっしー達優勝したっぽいなー)と、カニ。

真相は・・そのうち明らかにされる。

 

桑名駅でカニちゃん、ちほさん、エーコマンと別れた一同は、バスでマイカル桑名へ向かう。

「古賀ちゃん、カニちゃんから鋭すぎる質問くらっちまってさー。」と、押金。

「どんなん?」

「<そのとけいはなんでもらったのー?>みたい な感じ」

「それはカニちゃん、鋭いトコを突くね。たぶん気付いたな」

「やっぱそうかなあ?他の人らにはいつ発表する?」

「やっぱり焼き肉屋に着いて、みんな落ち着いてからにしようや。」

「そやなあ。」

 

「何名様ですか?」

「9人です」

「こちらへどうぞ」

 

マイカル桑名3番街にある焼き肉食べ放題の店、天空。

 

「さあ、肉食うでえ」

と、清水。

「うちらとは距離置いといた方がええで、古賀ちゃん」

「どうして?」

「恐いくらい食べるで」

とノリノリのよっちゃんとよしめぐ。

 

「何から取ってくかっちゃん?」

「もうそんなん気にせんと、どんどん取ってって。・・あ、僕レバーは食べやんで。」

「レバーは栄養あるんやで食べんとあかんよ。」

「飲み物取ってくるけど何にする?」

「俺ウーロン」

「コーラ!」

「メロ ンソーダは?」

「・・多分ない」

「まじで!?」

「・・よっしゃ、みんな集まったね。理事長、乾杯してー」

「じゃあ、今日はみんなご苦労様した。乾杯!」

「かんぱーい!」

 

一同の箸が網の上の肉に伸びた。やっと肉が食べれる・・・。

「ちょ、ちょい待って。ちょっと発表せんならんことがありまして。」

クイ中3人がテーブルを立ち、一同の前に並んだ。

「ええと、まだ結果を報告しておりませんでした。・・・我々は、ただで東京に行ってまいります!」

 

突然の発表に、事態をよく飲み込めない一同。

「僕達は、中部大会で、・・・優勝しました!」

「三重県代表として全国大会に出場します!!」

「エーッ!?」

「ウソー!?」

「だから、嘘じゃないって」

「キャーッ!!」

 

いきなり黄色い声をあげた集団が占拠する一角を、他の客が<何事か?>といった視線で見つめる。

後ろを振り向いて、その人達に頭を下げながら着席する押金ら3 人。歓声を聞きつけて、先に天空で食事を始めていた井上まどか、 土屋基子の両名もやってくる。

「どうしたん、大声あげて」

「ごめん、おっしーらが優勝したって言うで・・・」

「エーッ、マジで!?」

「ウソー、すごいやん!!」

と、大喜び。

 

「うそ、ほんまうちらは負けたもんやと思ってわざと聞こうとせんかったのに・・・」

 

と、驚きと感激で涙ぐむ理事長。

「やっぱり?もしかしたら知っとって聞かんのかな、って思っとったんやけどねえ」

と、古賀。

「やっぱ優勝しとったか。電話でカッチャンの声が弾んどったで予想はついとったけどなぁ」

「ほんまか、杉山ー?」

「ほんまやわ!」

疑う清水と杉山。

「おっしー、福澤さんと握手したー?」

「うん、したでー」

「ほんと!?握手してー!!」

「お、おう。」

「あ、私もしてー」

と、あずちゃんを皮切りに握手責めに遭う押金。労をねぎらう会が、一転して祝勝会となった瞬間であった。

「もう食えん」

「もととれたかねー?」

「・・よっちゃん、残り3分でソフトクリームに行くか・・?」

「エンジン全開やな・・・」

「いんや、全開やったらもっといくで」

「男性1980円、女性1680円て、何か間違っているような・・・」

「いえいえ、間違ってなんていませんよ」

伊藤愛恵、エンジン全開のときには一体どうなるのか、非常に興味深いクイズ研究員である。

「そろそろ時間やで、行きますか」

と、席を立つ一同。

「明日学校行って報告するやんね?」

と、清水に尋ねる理事長。

「うん、昼過ぎくらいに行こうと思ってるけど。古賀ちゃんは大丈夫?」

「ん、たぶん大丈夫。おっしーは?」

「俺も大丈夫やと思うで」

「よし、それじゃ12時くらいに学校に集合ということで」

「ところでさあ、今の時間て北勢線てまだ電車あるの?」

よしめぐが清水、古賀にとんでもない質問をする。

「・・・馬鹿にすんなあ!夜もきちんと走っとるわ!」

「そやそや、まだなくさへんぞ!」

2人による北勢線話は続いていく・・・。

「あ、カニちゃんからメール来とる」

幸枝さんの携帯だった。

「ええと、[電車の中で3人が優勝したって気付いとったよー。おっしーの演技もまだまだやねー。]か。さすがカニちゃん」

 

「諸岡らは無理やと思っとったけど、清水らはもしかしたら行きそうやな、とは思ってたんや」

「よく言うわ、先生」

「ほんまやて。古賀なんかはいらんことまでようけ知っとるし、そう言っとったよな、創士?」

と、自らが顧問を勤める山岳同好会のメンバー、2年11組の伊藤創士に同意を求めるナイスな揉み上げの持ち主の谷口先生。

7月31日、川越高校職員室。とりあえず学年主任、谷口・もみー・正夫教諭に全国出場の報告をするクイ研。その他職員室に居合わせた先生方にお褒めの言葉を頂戴する。

「いつ放送するの?」

と、チーム押金全員の名前まで聞いてくるのは教頭先生。なんと、わざわざ放送の日程を黒板に書いてくれる。

「いい人やね」

とは、報告後の清水の言葉。

 

押金に言わせれば昨日のことは「長い旅のよう」だった。だが全ては、その「長い旅」は、まだ始まったばかり。

 

「最低」という言葉の意味は。

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着替えが終わって、各県代表が集められる。プロデューサーの富田氏、そして総合演出担当の人がやってくる。

「ええ、まずはみなさん、おめでとうございます。全国大会に関する詳しい連絡は、後日こちらからいたします。それでは演出担当の方から」

と、富田氏から演出氏に話のバトンが渡される。

「ええ、とりあえずおめでとう。でも沖縄から九州、中国、四国、関東といろいろまわってるけど、君達は最低レベルだよ。このままだとほとんど映らずに帰ってくることになる。全国まであと大体2週間、何をするかで大きく変わる。新聞読むとかそういう努力をしないと一気に落とされるからね」

車座に座っていた各県代表チームの顔が暗くなる。そして話が終わり、皆がバスの方へ向かう。

「そんなに気にするな、どこの大会でも同じ様なこと言ってんだから」

と、富田氏がどこかのチームに向けて話す言葉を耳にした古賀。どちらを信用すればいいのだろうか?

「まあ、詰めも甘かったし、全国レベルで言えば最低、ってのも納得できない話ではないよね」

と、清水。

「見返したらなな」

と、押金。

「んそやな」

と言葉を返して決勝会場を振り返る古賀。

(ん?佐藤さんや。あの人にもほんとお世話になったなあ。)

佐藤さんとは、川越クイ研に注目し、第一問からずっと追い続けてきた、あの福の神のようなおじさんの本名である。

決勝が終わった後でクイ中3人組のもとへ(その時はカメラを連れずに) やって来たが、まさかちょっと目を付けた学校がここまで来るとは思っていなかっただろう。

優勝しちゃったねぇ」

「はいっ!佐藤さんのおかげです!」

「あなたのおかげで勝てました!!」

「いやいや。全国大会もがんばってね」

「はい!ありがとうございました!」

そう言って、彼は仕事に戻っていった。

(・・・学校の人だけじゃなくて、スタッフの人達にもいろいろお世話になったよなあ。)

そう思いながらバスへと向かう古賀だった。

「そう、優勝したで、うん、うん、そう、本当やて。今日はみんなで夕飯食べてくから、うん、そう、はいはい、はい、それじゃあね、はい。」

「ほれかっちゃん、切符。」

「おお、サンキュー古賀ちゃん。」

 

 

バスに乗せられやってきた、最寄りの駅にて。

「かっちゃん、自宅に?」

「うん。」

「俺も しとこう。信じるかなー?」

と、自宅を呼び出す古賀。

「あ、 もしもし、母さん?あのさあ、お盆、九州帰れんわ。え? 優勝したの。え!?ほんとやて。こんな嘘ついて何の得があるの?は!?だから本当だっての!!ちょっと待って、友達に変わるで。・・・ったく、ごめんかっちゃん、ちょっとうちの親に本当だって言ったってくれん?」

と、古賀、清水 に携帯電話をバトンタッチ。

「・・あ、どうも、こんにちは。本当ですよ。優勝しました。はい、はい、はい、どうも。・・・はい、古賀ちゃん」

「ん、サンクス。・・・ね、本当やろ?うん、だから嘘違うっての!はい、はい。今日はみんなでご飯食べに行くって言ってあったよね、うん、うん、そんなに遅くはならんと思うで。はい、はい、そんじゃね、はいはい。・・まったく、こんだけ息子の言うことを信じない親も珍しいわ。」

「ははは。で、結局信じてくれたの?」

「信じた、と思うんやけどねえ。おっしーは?」

「あっちで切符買っとる。」

「あの人せっかく帰りの分も先に買っといたのに、一体何処になくしたんやろなあ?」

「さあ?あ、来たで」

「おっす、お待たせ。いやぁまいったね、せっかく買った切符をなくすとは。押金、不覚やったわ。ところで古賀ちゃん、電車はいつなん?」

「ん、ちょっと待って。・・ええと、今何時や?・・次の電車は、・・あと一分。走れば間に合う」

「え!?あと一分!?」

「そ。さあ走って走って!」

 

 

「まだ終わらんのかなあ?」

「そやねえ。もう終わってもいい時間やもんねえ。」

「終わったら向こうから連絡してくるでしょ。」

チーム押金からの連絡を待ちわびるクイ研タワーズ組。<決勝進出>の連絡からは、なしのつぶて。携帯を鳴らしてもつながらず、待つことかれこれ3、4時間。いつになったら連絡をよこすのか・・・?

「・・お?携帯かかってきとる。かっちゃんからや」

杉山の携帯だった。

「聞かれるまでは黙っとこうな」

「おっけー、おっけー」

名鉄常滑線、名古屋方面行き急行の車内。

クイ中3人は、果たしてどこまで優勝の事実を隠せるのか、といことを試そうとしていた。

「あ、もしもし、杉山?今どこ?うちらは今電車の中。うん、あと20分くらいで着きそう。うん、みんな名古屋駅におるん?あ、そう、近鉄のホーム?ん、わかった。んじゃなー」

「結果聞いてこやんだん?」

「うん、なんも聞いてこなかったで」

(諸岡さんらの予想と違って、かっちゃんら優勝したんと違うかなあ?本人言おうとせんかったけど、声の調子が明らかにうれしそうやもん)そう思いつつも、杉山は口には出さず、皆と共に近鉄のホームに向かった。

全国大会出場は果たしたが、最低との言葉を浴びたチーム押金。その言葉の持つ本当の意味は何なのか?

その答えは見つからぬまま、電車は3人を仲間の待つ名古屋へと運ぶ。

中部大会決勝、西日の中、水煙の中。

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通気性の全くない、カッパのようなつなぎを渡される。

 

「・・放水や!」

押金はなぜか嬉しそうだ。

「そう、書き割りにはめ込まれたあの火の絵が描かれたスイッチを放水で倒せばブザーがパン!と」

「ふっふっふ。よっしゃ、松坂屋での 訓練の成果を見せたるで、かっちゃん!」

「おー、いくかお っしー!」

 

古賀は1人話の流れについていけない。

「芸術鑑賞の日やったかな。松坂屋の屋上で送別会のリハやってたときに放水の遊具があって、それで遊んでたんよ」

と清水。

「全ては計画通りってことや」

と押金。

「準決勝とは逆に、三重からクイズを行います。ヘルメットは順番に使い回して下さい。」

「痛いね、様子見れへんな」

スタッフの説明に古賀がぼやく。

 

「まあしゃあないよ。それはむこうも同じやって」

と清水。そこに

 

「俺達の放水の腕を見せたろやないか」

と気合いの入った押金。

「それじゃ、クイ中3人行きますか。」

 

1号、2号、3号は拳を重ねて優勝への決意をさらに固くする。目指すは優勝、そして、そのあとのおいしい焼き肉食べ放題。

「こんなところで子供の頃の夢が叶うとは思わんかったわ」

「ほんま、小学校んときの社会見学以来やわ」

 

と、重い防火メットを着けた感想を語り合う古賀と押金。決勝のルールを説明すると、まず両チームは各々のやぐらの上にスタンバイし、問題を聞く。

笛が鳴ったらスタートして、ホースの所へ走り、ホースを取ったら所定の放水地点へ向かって再びダッシュ。構えをとったら後ろの消防士の人に「放水!」と叫ぶ。

水がきたら、数m先の書き割り(絵の描かれた板)に付いている火の描かれた的6つを放水で倒す。そうすればブザーが鳴って解答権を得、正解すれば1ポイント。誤答すると、相手の放水が始まるまでスタート出来ないというペナルティ。3ポイント先取で勝利、すなわち優勝である。

「古賀ちゃんはホースの右サイド担当、やぐらの一番奥にスタンバイして。」

「了解」

「おっしーは一番手前、放水の合図もよろしく」

「OK」

「ルールはわかった!?きちんと聞いておかないとさっきみたいなことになるよ!」

「ア、ア、ア、ア!ア!ア!テスッ!テスッ!テスッ!」

 

チーム押金に清水の指示が飛び、会場には富田プロデューサーの鋭い声が走り、スピーカーからは福澤アナのマイクテストが響きわたる。

「俺、高いトコだめなんだよなー」

というリーダーのぼやきと共にチーム押金はスタンバイにつく。再び拳を重ねたクイ中達の眼の先にちらっと映るの は決勝の相手、桑名高校

「それでは、高校生クイズ中部大会三重県決勝、川越高校対桑名高校。まずは川越高校リーダー押金君、どうですか、今の心境は?」

「緊張してまっす!」

「そーは見えないけどねえ。」

「よく言われまっす!」

清水や古賀は押金のコメントに笑顔を見せながらも、自らの動きを頭の中でシミュレーションする。

「とにかく動いて、その途中で『わかる』って叫んでこ。わからんかっ たら水かけてる間に考えればいいんだし。」

清水の作戦にチームはうなずき、決勝第一問を待ち構える。

 

「問題、今年開かれるシドニーオリンピック・・」


痛っ!またオリンピックか・・!

 

「・・その聖火リレーのスタート地点となった、世界最大級の一枚岩は?」

 

・・・!

 

ピー!!

 

「わかる!!」

 

笛の音を合図にして、古賀の叫びと共に押金チームは[出動]する。

ホースをとり、放水ポイントへ。

 

「放水!!」

 

放水担当指揮官、押金の声に水の弁が開けられ、ホースに重さが加わる。

桑名は・・?

水の圧力を支えつつ、相手サイドを一瞥する古賀。

 

・・まだ動いていない!

 

「もう少し右や!」

「倒した!?」

「いや、まだ!」

「・・よしっ、倒れた!次、その下っ!」

 

・・パンッ!よし!

 

「川越高校、答えは?」

「エアーズロック!」

 

ティロリロ ーン!

 

「正解!川越高校1ポイント先取です!」

「おっしゃ!」

 

チーム押金は手を叩き合って次の問題を待つ。

「問題、『釣り好きの人には悪い人はいない』と唄っている、モーニング娘。のヒット曲のタイトルは?」

今度は両チームが笛の音と共にホースを携えて駆け出す。

 

「わかる!」

再び古賀の叫び声。

「放水!」

吹き出す水。

 

「古賀ちゃん、答え何?」

「恋のダンスサイト!」

「えっ!?」

「・・ごめん、違うわ!ハッピーサマーウエディングや!」

 

桑名高サイド、今度は答えがわかっているようだ。

 

ものをいうのは放水の腕

「ん?ちょっと手間取っている様子です川越高校。」

 

耳に届く福澤アナの声。風に煽られ狙いが定まらない。

 

「少し右!」

「行き過ぎ!!」

「よし、そこ!!」

 

パンッ!

 

「川越高校!」

 

(よしっ、『恋のダンスサ・・』いや、違う、ええと・・)

記憶がブラックアウトした古賀。

 

与えられた時間には限りがある。

「川越高校、答えは?」(頼むぞ、古賀ちゃん)

 

押金はここで古賀のそそっかしさが出ないかと心配する。

 

「・・ハッピーサマーウエディング!!」

「正解!」

 

ちなみに、古賀はモーニング娘。のファンではない・・・。

 

「問題、今年の防災標語、『火をつけた、あなたの責任』さて、何まで?」

三度走るチーム押金。

 

「わかる?」

「わからん!」

「火元まで、かな?」

「どうする?」

「やめとこ。わざわざ間違えに行くこともないわ。これは向こうに答えさせとこう。」

 

と、的を外すことを決定。

「今回は両チームとも手間取っている様子です。」

 

(・・くっ、考えるこたあ同じか!?)

 

「中断!!」

 

富田氏の声。

 

 

「川越高校、わざと狙わなかったんですか?」

「ええ、まあ。」

「わからなかったらわからないと言って下さいね。水がもったいないですから。」

 

・・恐らくこの場面もカットの対象になると思われる。

 

「問題、ダックスフントの原産国は?」

「放水!」

「どう思う?」

「イギリス・・自信はない。」

「よし、イギリスでいこう。」

 

パンッ!

 

「川越高校」

 

「イギリス!」

 

・・ブー!

 

「あちゃ!ごめん!」

「川越高校、スタートにハンデがつきます。」

「しゃあない、1点くらいはやっとこ」

 

と古賀を励ます清水。

「問題、野球のホームベース、対角線の数は?

桑名高校が走り出す。

「放水!」

ピー!笛が鳴り、川越高校もスタートを切る。

 

「放水!」

「かっちゃんわかった?」

「ちょっと待って。今考えとる」

 

桑名高はわからないのか当たらないのかブザーが鳴らない。

「古賀ちゃん、ちょっとホース任せていい?」

「おう。じゃあ最後の一枚は待つわ」

素早く5枚を倒した川越は、最後の一枚を残そうと放水を微妙にずらしていた。そこに、不意に強い風が吹き始める。

 

パンッ!

 

「しまった!」

 

全ての板が倒されてしまった。

「かっちゃんわかった?」

「ごめん、わからん。」

「おっしーは?」

「わからん。」

「・・しゃあない、勘でいくわ。」

「川越高校、答えは?」

 

・・5か?6か?焦りで、簡単に浮かぶはずの図 が思い浮かばない・・・。

 

「6!」

 

・・ブーッ!

 

「残念、正解は5です。川越高校にはまたしてもハンデがつきます」

 

・・・大丈夫、まだ2対0だ。落ち着いていけ・・・。自らにそう言い聞かせ続ける3人。

「大丈夫、答えられない訳じゃないし、それにあっちは放水があまり上手くない。まだ向こうは0点だから、少々のハンデぐらいひっくり返せるって」

と、清水は2人を励ます。

「問題、日本料理で、お通しは酒の肴。では、お造りは一体なに?」

 

桑名高が走りだし、ホースが水で膨らむのが見える。ピーッ!川越、スタートの合図。

(スタートの遅さは、腕前でカバーする!)

「放水!」

押金の声で川越側のホースにも水が通いだす。

「なんやっけ!?」

「刺身やろ!」

「あっ!それやそれや。刺身や!」

「よし、向こうはそんなに早くない で。落ち着いて、も少し右や!」

「ああもう!水飛沫と西 日でよく見えんぞ!」

「さあ、非常な正確性を誇ります川越高校です」

 

そんな福澤アナの声が聞こえてきた。

「・・よし、倒れた!次が最後やで」

・・・パンッ!

 

「川越高校!」

 

・・(よし、自信を持って行け。この問題で決める!)

古賀がマイクの前に立つ。

 

「川越高校!」

 

「・・刺身!」

 

・・ティロリロン!

 

「ファイヤー!!」

 

「よっしゃー!!」

 

「三重県代表は、県立川越高校に決定!」

 

肩を叩き合って喜ぶチーム押金。もしかしたら、と思ってはいたが、まさかここまで来てしまったとは・・・。

 

「決勝まで行けたこと自体凄いことやけど、優勝ってのは望みが大きすぎるよね。」

 

夕暮れ時、連絡がないクイ中達の決勝での結果を案じる川越クイ研タワーズ組。

「あれだけ熱中しとったでさ、ショックも大きいと思うんよ。やでさ、<決勝どうやった?>なんて聞かないでさ、みんなで笑って焼き肉食べに行こうよ」

皆がその案にうなずく。そうさ、結成後初めて参加した高校生クイズでいきなり決勝まで行けたなら、それだけで十分胸を張れる・・・。

「一緒にこの大会に出たクイ研のメンバーの期待とか、僕達を応援してくれた学校の人達、特に無理を言って図書室に本を入れてもらった司書の上原さんへの恩に、こういう形で報いることができたことがとても嬉しいです」

「全国大会に向けて一言」「ここまで来たからには行ける所まで  行ってみたいです」

「それじゃあ最後に、カメラに向かって、その上原さんにお礼を言ってみましょうか。では、3、2、1・・・」

上原さんありがとう!!

 

スタッフが手で示した合図に合わせてクイ研の恩人に礼を言う3人。

「・・はい、ありがとう。それじゃ、表彰式までここらで休んでて。」

取りあえず、休むためにも早く水分を口に入れたい3人。

ふと、眼の先のテントに冷茶を見つけ、そこに歩み寄る。

「これ飲んでもいいですよね?」

「どうぞ」

「よし、飲も。浴びるほど飲も」

「・・うまい!」

押金と古賀が2杯目を飲んでいるとき、ある消防士が本田アナにサインをもらうのを発見。

我々ももらおう、ということになる。しかし、紙がない。

「この紙コップでいいやん。」

「よし、行くか。」

テントの中、中京TVの本田恵美アナの背後に、今何かと話題の17歳とおぼしき青年が2人・・・。

「すいません、本田さん、サイン下 さい。」

「いいですけど、紙は?」

「ないんでこの紙コップ にお願いします。」

「それじゃ、ペンあります?」

「ペンならありますよ。」

「あ、どうもすいません。」

 

2人がスタッフからマジックを受け取ろうとしたそのとき、

 

「いま収録中だから、そういうのは後にしてくれる?」

 

との声が背後から響く。

 

・・怒られた。

 

2人は平謝りで、逃げるように清水のいる芝生へと戻る。

 

「・・そやもんなー、仕事中やもんなー。」

「うちらが子供やったなあ。」

 

己の行動の甘さを反省する2人。眼の先では、長野県代表を賭けてのクイズが繰り広げられている。・・はしゃぎすぎたなあ。と、反省する押金の方へ向かって歩いてくる本田アナ。手には紙コップ

 

「あ、ありがとうございます!」

 

と、礼をいう押金に向けて、笑顔を残してテントに戻る本田アナ。

 

「いい人やね。」

 

押金が生まれて初めてもらったこのサインは、ただの記念品に留まらず、見る度に自戒の念を呼び覚ます思い出の品となる。
「何年生ですか?」

「3年、バリバリ受験生。」

「あ、よかった、敬語使ってて」

 

川越と同じく優勝を決めた、静岡県立磐田南高校と長野県立松川高校のチームと談笑する清水達3人。

 

「長野からだと遠かったでしょ?」

「うん、でもうちは長野でも割と南の方だから」

「あ、そうなんや。」

 

古賀の頭には、名古屋で一泊するという長野県2位、屋代高校チームのことがよぎった。

北と南ではこうも違うものなんだなあ。

 

「磐田も遠いでしょ」

「結構ね。そっちは?」

「うちは三重とはいってもだいぶ北だから。20分もあれば余裕で名古屋。ただ南の方は交通の便が悪い。今回も伊勢より南は来てなかったみたいやでねえ」

 

と、そこへ岐阜北高校チームがやってくる。その3人も加わって、様々な話に花が咲く。

「ん?愛知終わった?」

「どっち勝った?」

「・・・ナース姿の学校、・・桃陵だったっけ、そっちが負けた みたい。中村高校が勝ったんやな」

「今何時やろ?」

「わからん」

「表彰式か、やっと帰れるな。みんな待っとるやろなあ」

「こんな3人が生徒会役員ですか・・・。松川高校の来年の受験者数が減らなければいいんですが・・・」

 

表彰式にて、福澤アナと松川高校での結びの一言。

「それでは、三重県の優勝校、県立川越高校です。おめでとう」

「ありがとうございます」

チーム押金はライオングッズ詰め合わせと、記念腕時計(福澤アナ曰く、なかなかいい品らしい。実際、なかなかいい品。)を受け取る。

 

「それじゃあ川越高校のリーダー押金君、改めておめでとう」

「ありがとうございます」

「君もまた焼けてるねえ」

「はい!」

「ところで、今日の僕の登場のときの演出、どうだった?」

「んー、まあまあ。」

「はい、ありがとうございました!それじゃあ最後に、みんなでカメラに向かってズームインでファイヤー!といこうじゃないですか」

(え!?ほんとに終わり?おーい、おっしー!)

 

とは後ろに控えていた2人の心の叫び。

 

「ファイヤー!ってやったら、少し静止しててね。放送ではスーパーがジャジャーン、と入るハズだから」

・・・3、2、1、キュー

 

「ではみんな、全国大会も燃えていくぞ!ファイヤー!」

 

「ファイヤー!!」

収録が終了。クイ中3人は、クイ研憧れの福澤アナをつかまえて、握手をねだる。

近くで見るとやっぱり背が高い。清水は福澤アナの二の腕を見れて満足したらしい。

日が沈み始めていたが、まだ西日は強かった。

 

クイ中達はついに全国大会への切符を手に入れた

決勝の地は、海か、山か、それとも・・・。

2011年1月10日 § コメントする


「もう、あのクイ中3人はいつになったら連絡してくるんよ!?」

「わからん」

ホットヌードル3ケースと青い棒を携えた9人がJR名古屋駅、ツインタワーズの噴水の側で愚痴っている。

やはり言うまでもなく川越クイ研である。理事長以下、チーム押金を送り出し抽選会を終えた一行は名古屋へ戻り、40分程喫茶店で時間をつぶし、さすがにメロンソーダやコーラ1杯でそれ以上粘るわけにもいかず、ここに移動してきたという次第なのである。

「いくら電話してもかっちゃん出やへんのよ」

と理事長。

「古賀ちゃんのも出やへんわ。」

とよっちゃん。

「どれどれ。・・・、ほんまや。出る気配ゼロやな」

と杉山。

結局、メンバーはこのあと押金達からなんの音沙汰もないまま1、2時間程ここで愚痴や恋愛話に花を咲かせることとなる。

 

決勝会場に向かうバス。このバスに乗れるのは10チーム30人。つい6時間程前、Y/Nクイズが始まる前には1602チーム、4806人いたらしい高校生は、いまや10チーム30人、観光バス一台に収まるまでに減ってしまった。

 

「バスに乗ってこんなに楽しいのも珍しいわ」

 

と押金は言う。彼は隣席となった長野、松川高校のもみあげの素敵な人とすっ かり打ち解けている。

(喉乾いたけどなー、あんまり飲んで 腹壊すとまずいしなー、どーしようかなー)

と、悩みつつも、出された冷茶を結局は飲む事に決めた古賀。

 

「すっかり焼けちゃって、鼻の下がヒリヒリするわ。」

と言う清水。バスは決勝進出者を窓越しに撮影するカメラ車を併走させながら再び名港トリトンを渡る。

 

「ここまできたら勝たないかんよな」

古賀がつぶやく。

「理事長達みんなや上原さんとかに恩返しせなならんよ」

「そやね」

と、清水。

「でもまず一問一問を大切に答えていこうさ。答えられなきゃ勝てないんやで」

「ん、そやな」

バスは第一会場を横目にして、どんどん先へと進んでいく。

 

「決勝どこでやるんかな?どう思う、かっちゃん?」

「・・・・普通の事はやらせてくれへんやろなあ。沖縄じゃエイサーのステップを早踏みする早押しやったし、九州大会じゃたらい船を漕いでボタンまで辿り着かなあかんかったらしいし・・・。」

(もしかして、南知多ビーチランド辺りまで行くんじゃ・・?)

 

水族館で、水系のクイズ・・・。古賀はあまり当たって欲しくない予想を立ててしまう。「山とか林とかのなかでやるのかなー?」どこからともなくそんな声も聞こえてくる。不意にバスが止ま った。

窓の外は・・?

 

「・・!?市民プールか!?」

「会場の準備がまだととのっていないので、少しここで待っててらいます。」

 

 

・・ここで待つということはこの近く?

 

山という山、林という林もない・・・。

 

ビーチランドには距離がある・・・。

どこだ・・・?スタッフの携帯が鳴る。

バスが動き出す。

 

窓の外を注視する決勝進出者達・・・。

ふと、セットらしいが見えた。

「あそこか!?」

 

テント、スタッフ、ロケバス・・。

間違いなさそうだ。

高いハシゴ、赤い大型車、赤い・・・。

「消防署か!?」

やはり間違いはなさそうだ・・・。再びバスは停車  し今度こそ乗客が降ろされる。

 

「みんな、私はここだー!!」

 

一同辺りを眺める。スピーカーから福澤アナの声が聞こえるが姿は見えない。

「あそこや!」

ハシゴ車の上から降りてくる福澤アナ。

「それにしてもみんな、来るの遅いよー。どうだい、調子の方は?」

「暑い!!」

福澤アナの問いに一番に答えたのは清水。

「そうか、焼けてるもんなあ」

と、福澤アナ。

清水、川越クイ研の憧れ、福澤アナと絡むことに成功する。

 

ウウーッ!

 

不意にサイレンの音が鳴った

 

「おおっと?どうしたことでしょうか?あっ!消防士さんたちが、ホースを持って、走って・・・」

 

福澤アナのわざとらしいリアクションのもと、防火服に身を包んだ3人の消防士が火の絵札がはめ込まれた書き割りのセットに向かって水を放った。

 

「さあ、火に向かって水をかけ、消えたところで・・・」

 

パンッ!

 

その瞬間、決勝進出者たちはルールを理解した。

 

「あっ、パトランプが点きました!そうですみなさんにはこれでクイズに答えていただきます。ではみんな、消防署だけど、燃えているかー!?」

 

「オオーッ!!」

 

「高校生クイズ、中部大会決勝は、ここ知多消防署で行います!!」

 

福澤アナの言葉に、一同の思いは優勝に向けてさらに燃え上がる。

スタッフに連れられ、更衣室に向かう一同。

 

(・・・海でも山でもなかったけど・・・。しっかし、一体どんな脈絡があって消防署なんだろうなー。)

 

 

クイ中達の抱いたこの疑問は、未だに解決されていない・・・。

 

準決勝、姿を現す幸運と、大人の世界。

2011年1月10日 § コメントする

手書きではなく、きちんと校名と自分の名前がプリントされたカードを渡され、ゼッケンにつける。

やはり準決勝は違う。
準決勝では各県4チームがAからDにわかれ、他4県との連合チームで戦う。

このチームは運命共同体で、決勝に進むのも、第一会場に送り返されるのも一緒である。そして、決勝に進めるのは2チームだけである。クイズは、まずAから Dの各チームの同一県の学校が早押しクイズをする。

そして、正解した学校の属するチームの全学校が順番(愛知、岐阜、静岡、長野、三重の順)に、女子高生のアンケートの上位5つを答える。

早押しボタンの前に立つ順番もアンケートの問題を答える順番と同じで、アンケートの問題に答えるときには同一チームでも他校と相談してはいけない。

早押しで間違えるとそのチームは次の一回休まねばならず、ま た、ダブルチャンスで1チームが間違えてももう一回に限り他のチームがボタンを押せば答えられる。

早押し正解で1点、アンケート問題は一位から順に5,4,3,2,1点となる。15点先取で勝ち抜け、決勝進出である。つまり、早押しで正解し、1位から4位までを当てれば、一発で決勝進出 なのである。

また、解答チームはアンケート問題のとき、ヒントガールという5人の女子高生のなかから二人を選んで、その二人のアンケート回答をヒントにできる。

 

「では第一問、ミエチョウ、アイチチョウ、ギフチョウ、このなかで本当にある蝶の名前は?」


パンッ!!

 

「Aチーム、一宮高校。」

 

「ギフチョウ!」

 

「正解!」

 

 

そして、Aチームは立て続けにベスト5の穴を埋めていき、いきなり11点を獲得。

「さあ、早くも決勝進出が決まってしまうんでしょうか?」

準決勝司会、中京テレビの本田 恵美アナの声にCチームのテンションは低くなる一方である。

清水の「2位を狙お。決勝に進めばいいんやで」との言葉にすがりAチームの解答を待つ。しかし、Aチームは11点止まり。

しかし、「あと4点で勝ち抜けです。」という本田アナの言葉通り11点の点差は動かし難いものに思われた。

「問題、人気ロックバンド、グレイの中で一人だけ血液型がちがうのは?」

・・・知るかい!

 

・・・我らが岐阜北よ、君達も知らんのか?

クイ中達の頭に諦めがよぎる。

 

・・・パン!三人の眼が音の出所を探す。

 

「・・くっ!!Aチームか!?」

「落ち着いて。2位を狙ってこ」

「Aチーム、恵那高校!」

「ジロー!」

「正解!!」

 

そして、アンケート問題の解答一番手、愛知県立一宮高校がランキング第3位を当て、Aチームは14点。

「大丈夫、ここで1位とられても、うちらが終わった訳ではないんやで。」

清水はCチーム全体に声を掛ける。1位をとられるのは気に入らないが、ここでみんなの戦意が落ちたらどうにもならない。ここでの2位は負けじゃない・・・。
突然、進行が止まった。

 

「一宮高校、今横の学校としゃべってたよね?ルール聞いてたでしょ、他校とは相談禁止だって。今のはノーカウント、もう一回第2問から。恵那高校はペナルティだから次は押さないでね」

 

・・・この場面はカットされるのだろうか?

 

関係者ではないので知る由もないが、一つ言えるのはこのプロデューサー(名を富田という方)に限らず、番組を収録する現場はとても厳しかったということだ。

現場で声を出しているのはほとんどスタッフなのである。クイズのルールもきちんと説明するのはスタッフで、司会によるルール説明はほとんど視聴者のために行われている様なものなのだ。

そしてスタッフの動きにはミスは許されない。彼ら彼女らは遊びで仕事をしているのではない。

これで御飯を食べている。これで養っている家族がいる。

大人の世界、プロの魂・・・。ふとそんな言葉を思い浮かべる押金達。

チーム押金はこんなところで放送という仕事の厳しさの片鱗を垣間見る・・・。

「問題、アルファベットを順に読んでいくと、左右対称となる文字の一番最初はA。では一番最後は?」

 

パン!

 

「岐阜北高校。」

「Y!!」

「正解!!」

 

アンケート問題のテーマは<今なくしたら困るもの>。女子高生の出したヒ ントは[携帯電話]、[友人]。

愛知県、桃陵高校

「携帯電話!」

ティロリロン!!

「正解です!さあ、携帯電話は一体第何位なのでしょうか?」

「たぶんケイタイは1位やろ」

 

本田アナの言葉に対して誰に聞かせるともなく答える清水。

Cチームの期待の眼差しが前方のスクリーンに集まる。そして、[携帯電話]という文字がその最上段に映し出された。

「携帯電話はなんと第1位!!Cチーム、5点獲得です!!」

Cチームに沸 き起こる歓声。

 

「残り、なんやと思う?」

 

先程の一宮高校の件もあって、あまり顔を横に向けぬまま古賀が尋ねた。

「友人は来そうやな。お金ってのもありそうや」

と、古賀と同様 に顔を前に向けたまま応じる清水。

 

「家族ってのもありそうっちゃう?」

「あー、それもありそうやなあ」

「では、2番手、岐阜県、岐阜北高校。」

「家族!」

 

・・・。

 

しばし沈黙が場を包む・・・。

(今の女子高生は家族をなくしても困らんのか?哀しい世の中になったなあ。)

 

押金が味方の失答よりも世の 行く末を嘆こうとしたときだった。

・・ティロリロン!!

「正解!本当の正解は[両親]ですがいいでしょう。さて、この 答えは一体何位なのでしょうか?」

 

[両親]の2文字が現れ たのは・・・、

 

「オオーッ!2位やっ!!」

 

古賀の驚きの声。

 

「ナイス、岐阜北!!」

と清水。

 

「さあ、1位、2位と立て続けに当ててきましたが、次はどうでしょうか?静岡県、磐田南高校。」

「友達!」

 

ティロリロン!

 

今度は間を置かずに 鳴らされる正解ブザー。

 

「正解!さあ、果たしてこれは何位に入るのでしょうか?」

 

その声を合図に[友達]が姿を見せたのは、上からも下からも3番目の列。

「3位!すごい です、Cチーム!!」

「あとは4位と5位か・・・。4位は財布、かなあ?」

「そやなあ、あとは手帳とか。どっちかやと思うけど・・・。」

 

そんな会話を交わす古賀と清水の横、長野県、屋代高校に解答のバトンがまわってくる。

 

「屋代高校どうぞ」

「財布!」

 

・・・。

 

再び場を支配する沈黙・・・。

 

(金はなくても困らんのか?俺は困るぞ!)

 

クイ中の誰もが時代の無欲さを(不謹慎にも)嘆こうとしたとき・・・。

 

ティロリロン!!

 

「正確には[お金]ですが正解です!さあ、一体何位なのでしょうか?」

 

 

空欄は2つ。上の4位か、下の5位か?Cチーム全員が固 唾を飲んで見守る。

 

ジャジャン!

 

効果音と共に文字が現れたのは、・・・・上段!!

 

「4位です!!」

 

次は三重、自分達の番だ。一瞬、クイ中達の頭をそんな考えがよぎる。

 

・・・が、

 

「俺達、何もせんかったね」

「せんかった、というよりも出来なかった、ってのが正直なところやけどね」

 

1+5+4+3+2=15・・・・15点、勝ち抜けである・・・。

 

 

「ヨッシャ ーッッ!!」

 

 

川越クイ研、チーム押金、何もせずに決勝進出。しかも一番大喜び・・・。

 

「決勝頑張るぞーっ!!」

「おおーっ!!」

 

静岡、磐田南高校の応援団チームのかけ声で各校は優勝への決意を一層強固なものとする。

Y/Nクイズから川越クイ研を追い続ける、福の神みたいな顔をしたスタッフのおじさんもここまでは予想していなかったようだ。驚くことしきりである。

一方、クイ中本人達は

 

「すいません、何もしてないのに決勝まで連れてってもらって・・・。」

 

と、謝ることしきりである。

そんななか、2位で準決勝を通過したのはDチーム。第一問で11点を得ていたAチーム、そして、もう一つの川越チームである矢田君チームが決勝に駒を進めることは叶わなかった。

川越クイ研、チーム押金の中部大会決勝の相手は同じ北勢地区、県立桑名高校と決まった。
目覚めた運に助けられ、決勝へと勝ち残った。意地を背負い、期待を背負い、涙を背負い、恩を背負ったチーム押金。負けるわけにはいかない。

 

報わなければならないものがたくさんある。それに、もう運で勝ってきたと言わせるわけにはいかない・・・。

準決勝を前に。幸運を知る者達、知らない者達。

2011年1月10日 § コメントする

「いいの引いてよ、おっしー!」

「余裕!!」

 

各チームのリーダーは準決勝のためにくじを引かされる。

ただ、4チームに分ける、というだけで詳細は聞かされないまま・・・。

「Cだって」

「また微妙やなー」

リーダーだけが着ていた黄色いゼッケンが他の2人にも渡されたチーム押金の3人は、このくじが幸運なのか不運なのか決めあぐねていた。

その3人の後ろに、同じチームとなるらしい愛知、桃陵高がやってくる。見ると、ナース姿。(・・幸運なのかなあ)やはり決めあぐねる・・・。
預かっていたカメラを受け取りに、古賀がやってきた。

「準々決勝、うちらがおるのと反対側におったやろー?よく見えんかったんやわ」

と、諸岡。

「準決勝がんばってな」

と、よしめぐと安澄さん。

「ありがと。ところでうちら移動するみたいなんやけどどうする?ずっとここにおるって訳にはいかんやろ?」

「うん、そやね。うちらは名古屋に戻っとるで、終わったら連絡して」

と、幸枝さん。

「ん、わかったわ。それじゃ、行かなあかんみたいやで」

 

こうして9人はバスに向かう3人のクイ中を見送る。
バスに弱いリーダー、押金は極度の緊張からバス酔いすら忘れ、風邪をひこうが入院しようが出された食事は全部頂くのが礼儀、がモットーの古賀ですら、精神的疲労からご飯にろくに手もつけず、ネットで弁当に関する問題が九州で出たという情報を得ていた清水は食事をじっと見つめる・・・。

そして、バスは名古屋港の金城埠頭へ向けて、名港トリトンなる橋へと向かう。

「三重の006番!!」

「キャアー!!」

新日鉄公園にて行われている抽選会。川越クイ研に幸運を引き寄せ続けたチームよしめぐはさらにもう一つ、幸運を引き寄せていた。ホットヌードル一箱12個入り、さらにそれを1人1箱づつ・・・。

ここに、クイ研の前に存在していた(特に悩んでいた訳でもないのだが・・・)問題の1つ、食糧問題が解決した。

 
幸運を知る仲間達を第一会場に残し、幸運を知る由もないクイ中達は第二の戦いの場所に向けて港に架かる橋を渡る

 

 

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