本物を見抜く本物。
2011年1月10日 § コメントする
「もうどこかのチームが着いてるかね」
「さあ、どうでしょ?なんかあんまりいないみたいやけどねえ」
カメラクルー1班を引き連れたクイ中3人と渡辺さんが会場入り。しかし、まだどのチームも着いていなかったらしい。
「さあ、三重代表川越高校が一番乗りです。大事そうに風呂敷包みを持っていますねえ」
この場合、一番乗りには何か特典があるのだろうか?そんなことを考えながら、クイ中達は通されるままに羽鳥アナの近くへと陣取った。
「お宝は見つかりましたか?」
「はい、このとおりです」
「どうでした、夕御飯は?」
「刺身とか、いごっていう料理もごちそうになりました」
「いごってなんですか?」
「なんか、海藻を煮詰めたものを固めた料理らしいです」
「へえ、他には?ご飯はどうだった?」
「もちろんおいしかったです。本場のコシヒカリですから」
「魚沼の米ですよ」
「いいですねえ、司会の僕は晩御飯まだなんですよ」
「あ、そうなんすか?」
そういえば、羽鳥アナと本格的に絡むのは初めてではなかろうか?そう思った矢先に、次のチームがやってきた。
「さあ、次のチームは奈良代表東大寺学園です」
彼らの包みは長細いものであった。
「何持ってきたん?」
クイ中達は、羽鳥アナとのトークを終えた東大寺に探りを入れてみたりする。
「掛軸。そっちは?」
「人形。自信ある?」
「ないねえ」
掛軸・・・鑑定品目の王道である。
「ライトはどうしました?」
突然、スタッフの人が聞いてきた。どうやら、渡辺さんが渡されたライトのことらしい。
「あ、それなら僕らがお世話になった渡辺さんが持ってますよ」
「あ、そう。ありがとう」
・・・ところで、あまり考えていなかったのだが本当にお宝鑑定をするのだろうか?いきなり、『その重さによって、このクイズの結果が左右されます』なんてことにならないだろうか?などという埒もない考えが古賀の脳裏に浮かんだ。だが、それもすぐに消し飛んだ。高校生クイズとはいえ、そこまでひねることはないだろう。それに、重さネタは既に今日行われている。
「どうでした、御飯は?」
「おいしかったんですけど、食べてる途中に電話がかかってきて、ほとんど食べられなかったんです」
「それは軽ーい司会者批判ですか?」
山梨英和高校の女の子の苦情に、上手く切り返す羽鳥アナ。会場は笑いに包まれる。彼は福澤アナの代役を見事に果たしているな。クイ中達は、羽鳥アナのことを高く評価していた。全チームが会場に到着して少し、どこかで見たような、眼鏡にスーツ姿の男性が櫓前のテーブルに着いた。
「なあ古賀ちゃん。あれって、『いい仕事』のあの人っちゃう?」
「え?あ、ほんまや!本物の中島誠之助や!『いい仕事』や!」
彼が出向いたということは、やはりお宝鑑定を行うのだろう。なにやらスタッフと打ち合わせをしたらしい彼は、公民館の方へと戻っていった。まもなく本番である。
「本番5秒前、4、3・・・」
2,1、0は指で示され、夜の部の本番が始まった。
「ええ、皆さんにお宝を持ってきてもらいました。これからですね、そのお宝を鑑定いたします。鑑定と言えばこの方です、中島誠之助先生でございます。どうぞー!」
「はい、どうもどうも」
「本物です!いい仕事をしております!よろしくお願いします」
会場を包む拍手。かなりの数の人が集まっているようだ。夜だからそう感じるのか、夕方よりも人が多いような気がする。
「ここではみなさんが持ってきたお宝を鑑定し、その順位によって通過クイズに挑む順番を決定いたします。勝ち抜けチーム数は5です。それでは鑑定の方に参りましょう。トップバッターは、奈良代表、東大寺学園」
なるほど、ここも綱引きの順らしい。まあここは、先に行っても後に行っても大して変わらないだろう。
「東大寺が持ってきたのは、掛軸ですねえ」
「なるほど、いきなり掛軸ですか。はい、それじゃここを持ってね」
と、中島氏は東大寺チームの1人に掛軸の端を持たせて、つつーっとそれを広げた。その手の動きにも、プロの技のようなものが感じられる。
「『ほうがんしじょうめい・・・なんとか』って書いてありますねえ。これは部屋かどこかに飾ってあったものだね?」
「はい」
「ああ、ほら、この軸のところに埃が」
「あ、先生、そんなところまで」
と羽鳥アナが言葉をかけようとすると、中島氏は息を吹きかけて埃を散らせた。やはりプロらしい。
「さあ、東大寺学園の評価額はおいくらでしょう?」
会場の全員の眼が、電光掲示板に釘付けとなった。それは、赤い光の棒を音もなく明滅させ、そして5つの数字を示した。
「65,000円です!」
はたしてこの金額は高いのだろうか?それとも、それほどでもないのだろうか?彼らがトップバッターであるゆえに、3人は決めあぐねた。
本物を見抜く、本物の鑑定人が現れた。それぞれのチームが、自分達の持ってきた品を、期待と不安を込めて見つめている。中島氏の鑑定する、宝の過去が持つ価値。それに、彼らはどんな未来を見出せるのか?それを見抜くことだけは、どんな鑑定士にも難しいだろう。
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